親子揃ってのクルマ大好き人間、出合いは材木屋さんの店頭から|1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス Vol.2

こうしてフォルムを見直すとピニンファリーナは日本車としてデザインしたのだろうかと思ってしまう。イタリア車然とした410系。

       
【1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス Vol.2】

【1】から続く

 すっかり打ち解けたオーナーに、こんなクルマもあるんだ、と示されたクルマが411ブルーバードだった。
「奥のほうで、ホコリまみれになって保管されていたクルマがあった。それがこのクルマでした。ホコリというか木の削り粉というか、これがボディカバー代わりになってクルマの塗装を保護していたんですね。すごくいい状態でした。それになにより、ひと目で形が気に入ってしまい、結局、譲ってもらえることになりました」

 表で見た520ダットサントラックと同じ顔立ち。しかし、よく見れば、なだらかな曲線で描かれた量感ある美しいボディフォルムをしている。
「日本車とは思えないデザインだと感じました。とくに、いまのクルマのように無個性なフォルムとは大違い。造形物としての形を強く感じました」

「このクルマを手に入れてから運転操作はていねいになりましたね」とドライバーズシートで語るオーナーなど【写真16枚】

 410系ブルーバードの評価は、販売成績をベースに「失敗作」というのが一般的、定説となっている。歴史的に、ラウンドフォルムは不発に終わるというのが日本市場の特徴で、逆に言えば、その発端となったのがこの410系ブルーバードあたりからとなる。

 だが、形のまとまりとして見た410系のデザインは、イタリアン・エキゾチックとしてなかなかだと思う。アルファロメオ・ジュリアスーパーやランチア・フルビアと通じるものがある。直線基調の510ブルーバードよりデザイン学的には上だ。しかし、なんといってもデザインは個人の主観。好きか、嫌いで決まってしまう。当時の日産は、この点を読み違えていた。

「車高を下げ、ワイドタイヤを履かせた410があるんです。あれは文句なくカッコいいですね」
 60年代のイタリアツーリングカー選手権を彷彿とさせる姿だが、オーナーの411に対するイメージは頭の中で大きく膨らんでいる。
「411のデザインはもちろん大好きなんですが、410がやはり原点だと思います。411のフォルムは、410の不評だった部分を手直ししたものですよね。つまり、本来の形は410ということですよね」
 旧車オーナーの例に漏れず、オーナーも410系に関してはいろいろ調べたようで、410型のデザインを持つ411型があることを知っていた。

 というより、独特の「タレ尻」「カギ穴テールランプ」からデザイン変更したモデルが411という誤認があるようだ。実際には、1200が1300となり、1600SSSが追加された65年4月のマイナーチェンジが411への移行なのである。ちなみに「タレ尻」「カギ穴テールランプ」の改変は66年4月で、愛車はこのモデルの2ドア仕様となる。
「よく、どこのクルマですか、と聞かれることがあります。日本車だと思われていないようです。でも、デザインコンセプトからすれば、ある意味正解ですよね、この聞かれ方は」



ファミリーカーとして企画された410系ブルーバード。現在の目からはかなり小さく狭く見える。




たかが1300cc、されど1300cc。しっかり走る。無鉛ガソリン対策は添加剤を加えることで対処しているという。


【3】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 vol.171(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1966年式 日産 ブルーバード 2ドア 1300 デラックス(全3記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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