【S13が宿した日産の名機を搭載!!】400psのチューンドエンジンを宿すHOT VAN!!

       
本業として鈑金屋さんを営むものの、それは完全に食うためと割り切ったもの。カスタムはあくまでも趣味として、自分の好きなことしかしない。ゆえに“プロの腕を持つプライベーター”としてこの業界で知られているのが、静岡のイシカワボディ代表・石川サンだ。彼は、よく言えば“独自の感性を職人の腕前でカタチにする天才肌”、悪く言えば“突拍子もないクルマを作っちゃう変わり者”なのだが、新作となるバネットラルゴを見て、その例えに間違いがないことを悟った。だってこれ、“お気楽1BOXの皮を被った、とんでもねぇオオカミ野郎”なんですから!



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まずは、なぜ石川サンがラルゴに照準を合わせたのか? のストーリーから解説していこう。ド変態級のカスタムワークを淡々とこなす反面、石川サンは奥様とお子様を溺愛する、よきパパとしての顔も持つ。それが証拠に、以前本誌でも取り上げたフロアとボディを切り離す“チャネリング”入りのS13シルビアコンバーチブルは、「ムスメと一緒にドライブしたぁ〜い♥」という甘い夢の成れの果ての姿だったことは記憶に新しい。そんなチョーシで今回は、「スライドドアのクルマが欲しいぃ!」とおねだりする、奥様に対しての満額回答だ。


>>こちらが"チャネリング”入りのS13シルビア。モノコックボディのうえ、剛性面で不安のあるコンバーをチャネリングするのは、困難過ぎるがグローバルジグを駆使して問題をクリア。さらにアーチ上げのうえ17インチのホイールを飲み込み着地させちゃったから、その車高は低いっていうか、薄い! そんな印象を感じさせる1台だ。


で、何とか自分もお気に入りなラルゴを見つけたものの、あまりのボロさに家族一同沈黙……。ここで石川サンの腕が火を吹いて、マルちゃん正麺を作るがごとくチャチャっと鈑金&塗装をこなして今の姿へと大変身! ディテールを見ると5穴ハブを使ってリバレルのBBSを履かせたり、ホイールベースを長く見せるためにリアホイールの位置をリア側に20㎝ほどズラすなど、彼らしいマニアなテクも満載だ。そして、話はコレでフィニッシュするワケがなかった……。



「愛する奥様が希望するスライドドアのクルマを買うのは全然問題ないですけど、それを運転するのは自分なんすよ(笑)。となると、自分が運転して楽しいクルマじゃなきゃヤダっ!」と、石川サンはダダをこねる。その結果、純正搭載のCAエンジンを取っ払って、部品取りとして持っていたSR20DETをブッ込む、狂気の沙汰の幕が開く。エンジン&ミッションは、なんやかんやとカスタムの手が入ったモノで、推定400㎰を6速マニュアルと組み合わせる。




「ここまでくれば、リア足を独立懸架にしたいね〜」と、夢はパンパンに膨らんだが、ここでちょっとばかり超えないといけない壁が立ち塞がる。それは車重の問題で、エンジン&ミッションと繋がるシルビアのリア足を持ってくるのが最短方法なのだが、ラルゴより車重の軽いシルビアのサス流用では、車検という名のお上が許してくれぬのだ。



ここでシルビアの代替案として浮上したのがY31シーマ用リアのセミトレだ。ヘビー級ボディを抱えるシーマのサスなら、車重の問題はサラッとクリア出来るし、セミトレは10㎝くらい取り付け位置をズラすことができるので、ホイールベースを延長したボディにも無理なく対応可能となる。これを一石二鳥と言わずして、なんとせう!



ほかにも社外エアサスのインストール、ドロップスピンドルへの交換、R32スカイライン用ブレーキの採用と、気がつけばラルゴは、いつものよーにパパがイジくり倒すオモチャになってしまったが、そんなことは石川サンにはまったくもってお構いなし(笑)。今日も400㎰のパワーで後輪を蹴飛ばして、家族と一緒にショッピングモールにお買い物に行くお休みの日の姿を、まぶたにそっと浮かべるのであったとさ。

『カスタムCAR』2021年7月号掲載
BASE CAR:バネットラルゴ 1992年型
OWNER:石川 昌サン(イシカワボディ)
Special Thanks/Garage34  E-PRIME  G&G AUXILIARY SERVICE  cosuke

PHOTO/南井浩孝 TEXT/佐藤アキオ(rsf)

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