大量輸送の理想と規制の狭間に揺れた特殊車・ダンプトレーラ進化論【前編】

時代の流れとともに規制によって姿を消した土砂運搬のダンプトレーラだが、四半世紀以上にわたる土砂禁止の規制から解放。輸送効率の観点からも注目を集めるダンプトレーラの魅力にさまざまな角度から迫った特集を前編と後編に分けて紹介。

       

長い年月に渡る規制との戦いの末に勝ち取った土砂解禁

腰高のスタイルでシートを立ち上げ荷を満載したダンプトレーラは、様々な働くトラックのなかでもひと際注目を浴びる存在だろう。その希少性や車体の大きさなど、周囲の視線を集める魅力が隠されている。
エコを呼びかける声が国内および世界中を駆け巡るなか、1度に効率良く運ぶことのできるトレーラは理想的な存在である。しかし、ダンプトレーラの土砂運搬は長い間禁止されてきた。’60年代、土砂を積載したダンプによる事故多発を背景に成立したダンプ規制法など一連の流れによるもので、新型自動車の審査基準の雑則に「もっぱら土砂等を運搬するダンプ型車は被けん引自動車ではないこと」の項目が’72年に加えられたのだ。この規定によって四半世紀以上に渡ってダンプトレーラの土砂運搬登録が禁止されてきた。この間、土砂解禁を求める声も上がったが要望書を総理府に提出しても事実上は門前払いのような状況であった。しかし時代が流れ’93年に車両総重量規制緩和によって上限が20tから25tまで引き上げられたことをきっかけに、ショートホイールベースのため恩恵を受けなかったダンプトラックの対策として、ダンプトレーラの土砂解禁を求める声は強くなっていったのである。

これを受けて車体工業会内部に専門委員会を発足させ組織的に取り組んだ結果、過積載対策や飛散防止対策などを条件に、運輸省や建設省と交渉を重ね、’99年12月の規制緩和によってダンプトレーラでの土砂積載が解禁となったのである。それに伴い、メーカーはGVW36tを基本に2軸や3軸のダンプトレーラを開発してきた。大きな積載量を取得するには大きなホイールベースが必要となる。しかし小回りの効くショートホイールベースが必要なダンプ仕事の特性ゆえ、補佐的にシングルヘッドの2軸台車の開発が生まれ、総軸4軸でGVW27tクラスも誕生したのである。積載量も21t積みをキープし、昭和生まれのダンプトレーラと同等規格でより大きな積載量を有する成果となった。

まだまだあらゆる方面の規制で網掛けが成されていることから希少性の高い存在であるが、輸送効率の観点からもこれからますます導入事例が盛んになってくるであろうダンプトレーラ。そんな車体を果敢にアートアップしている気鋭車をクローズアップし、その魅力の一端に触れていこう。



映画の主役に抜擢された田所興業の所有車は、飾りは立川ボデーが担当し、映画出演にあたって東映が資金提供した。

スクリーンを駆け抜けた伝説のダンプトレーラ

ダンプトレーラの歴史のなかでアートファンに強烈なインパクトを与えた田所興業所有の14tハイキャブダンプトレーラは、’81年公開の映画『ダンプ渡り鳥』で主人公の黒沢年男がワッパを握った有名車だ。


北海道を舞台にダンプトラッカーの世界をリアルに描いた『ダンプ渡り鳥』には当時の最先端デコトラが多数出演。

パープルメタリックのキャビンには、当時としてはかなり高さのあるキャデラックバンパーやナマズマーカーを3連で装備したシートキャリアで武装するほか、F系のボディラインを生かした手すりパイプのアレンジやワンオフのグリルアンドンで強烈な個性を演出。キャビンの背後には煙突マフラーが備わり、波板張りの台車を満載にし力強く黒煙を立ち上げながら走る姿は日本中のファンを沸かせた注目のクルマだった。

【写真7点】街道をにぎわせた昭和ダンプトレーラたち。

2013年1月号トレーラ特集をもとに再構成

RECOMMENDED

RELATED