現役引退後の警察車両・240ZGの顛末【3】民間に払い下げられた前例が一度もなかった警察車両|1972年式 日産 フェアレディ 240ZG ハイウェイパトロールカー

>> 使い込まれた痕跡も、そのままにしてある。右下のエンブレムは、寄贈時に欠落していたので、新たに装着された

       

現役引退後の240ZGの顛末
【1972年式 日産 フェアレディ 240ZG ハイウェイパトロールカー Vol.3】

【2】から続く

 1998年ころに展示館が閉鎖されることになり、その後の行き先がなくなってしまった240ZG。

 その話を聞きつけたある旧車愛好家が行く末を心配して、全日本ダットサン会に連絡。それを受けたサファリモータースの坪内寧さんが、240ZG解体阻止に向けて奔走することになる。しかし警察車両が民間に払い下げられた前例が一度もないということで、交渉は難航。そこで日産で永久保存して、公道を走行することは一切ないという条件で打診をしたところ、ようやく県警察から寄贈するという形で、日産に里帰りすることが決まったのだ。坪内さんがこの話に取り組み始めてから、5年かかってようやく実現した。

 戻ってきてからエンジンはオーバーホールされ、いくつかの欠品パーツや機能しないパーツは置き換えられ、できるだけ元の姿に戻された。ただしボディは長年パトロールカー(パトカー)として活躍した形跡を残す意味で、磨き上げるだけにしてそのたたずまいを保っている。

 日産ヘリテージコレクションに加わってからは、各地で行われる交通安全啓蒙を目的としたイベントなどで展示されており、子供から大人まで、皆の人気者となっている。めでたしめでたし。



>> テールエアスポイラーは当時全グレードでオプションパーツ設定だったため、この240ZGには装着されなかったようだ。ベースのボディ色はグランプリホワイトで、パトロールカー装備の架装時に腰下をブラックに塗装している。

>>【画像25枚】四角い網目があり、こちらにもスピーカーが収まっている左リアフェンダーなど。追い越し車線から並走しながら「はい、パトカーの後にゆっくり付いてきてください」と言うための装備だ




>> L24型が収まるエンジンルーム。寄贈後オーバーホールされてから、現在まで保管されている。ちなみにオプションだったエアコンキットは装着されていなかった。





>> エンジンルーム内、右側インナーパネルに装着された型式プレートは市販車と同じタイプだった。





>> 交通警察隊で活躍したパトロールカー

1972年式 日産 フェアレディ 240ZG ハイウェイパトロールカー(HS30)


ベース車のデータ 諸元
全長 4305mm
全幅 1690mm
全高 1285mm
ホイールベース 2305mm
トレッド前/後 1355 / 1345mm
最低地上高 160mm
オーバーハング(ボディ前端まで)1000mm / (ボディ後端まで)880mm
室内長 835mm
室内幅 1390mm
室内高 1070mm
車両重量 1010kg
乗車定員 2名
登坂能力 tanθ0.467
最小回転半径 4.8m
エンジン型式 L24型
エンジン種類 水冷直列6気筒SOHC
総排気量 2393cc
ボア×ストローク 83×73.7mm
圧縮比 8.8:1
最高出力 150ps / 5600rpm
最大トルク 21.0kg-m / 4800rpm
燃料供給装置横向可変ベンチュリー(SU型)
燃料タンク容量 60L
変速 機前進5段 / 後退 1段
変速比1速 2.957 / 2速 1.858 / 3速 1.311 / 4速 1.000 / 5速 0.852 / 後退 2.922
最終減速比3.900
ステアリング型式 ラックアンドピニオン
サスペンション 前/後独立懸架ストラット / 独立懸架ストラット
ブレーキ前/後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 175HR-14
発売当時価格 150万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2017年8月号 Vol.182
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 フェアレディ 240ZG ハイウェイパトロールカー(全3記事)

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【1】【2】から続く

photo : MASAMI SATO/佐藤正巳 cooperation : NISSAN MOTOR CORPORATION/日産自動車

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