ロータリー命の熱狂的オーナー|50psのファミリアのボディに100psのREを搭載! 北米でのマツダRE車の系譜|1973年式 マツダ RX-2 Vol.2|ニッポン旧車の楽しみ方

1975年式 ロータリーピックアップ。4灯ヘッドライトでフォード・クーリエとの差別化を図り、さらにロータリーピックアップではホイールハウスにフレアが付けられたことが特徴

       

ニッポン旧車の楽しみ方

幾多の苦難を乗り越え、広島という土地で生み出された世界に誇るロータリーエンジン(RE)は、マツダが量産車への搭載を可能にした歴史的エンジンだ。1967年にデビューしたコスモスポーツを皮切りに、マツダのラインナップに次々と搭載。北米市場へも輸出されたことで、アメリカにも熱狂的なREファンが存在する。今回紹介するギャリー・タウザーさんもそんな1人。クラシックRE搭載車に魅せられ、その思いは息子へも伝わっているのだ。

【ロータリー命の熱狂的オーナー|1973年式 マツダ RX-2 Vol.2】

【1】から続く

 発表から3年を経た1967年、コスモスポーツを皮切りに市販が始まったマツダのREだが、その後は実に毎年のようにRE搭載車が登場した。

 マツダはまずREを既存の車種に搭載する方法で、その市販車としてのポテンシャルと市場の反応を観察した。1968年、前年のモデルチェンジで2代目となっていたファミリアが10A型REを搭載し、その最高出力を誇るかのように「R100」と命名された。当時のファミリア(1L水冷直列4気筒OHV)が50 ps であったことを考えると、この100ps というのはとてつもないパワーであったことがわかる。

 またR100と並行する形で前輪駆動(FF)車も模索された。エンジンルームの制約に合致する形状の13A型REを新たに専用開発し、ルーチェに搭載(1969年)。このFF車は最高出力(126ps )にちなんで「R130」と名付けられた。この2つの試みの結果は実に対照的で、好評を博したR100に対し、運動性能の優れなかったR130は販売も伸びなかった。このR100の成功でRE搭載車の方向性が定まったことになる。

 この後、REは新型車種に搭載されていく。同時に、現在にまで続く「RX」の名称に変更された。先陣を切ったのが70年に登場したカペラで、これには新開発の12A型REを搭載、「RX‐2」と命名された。このときレシプロエンジン搭載車も同時発売された。1971年には新規のRE専用スポーツモデル、サバンナが登場。かの「RX‐3」である。10A型搭載のRX‐3に対し、同時発売のレシプロ版は別車種(グランドファミリア)扱いだった。

 1972年になって初めてのモデルチェンジを迎えたルーチェは、これが名誉挽回の機会といえた。FFには見切りをつけて、2代目ルーチェはFRのまま12A型を搭載する「RX‐4」となった。レシプロ版ルーチェの発売までは半年ほど時間が空けられたことからも、これら3車種を通じてRE搭載車種の販売方法を模索した様子がうかがえる。

 このように賑やかだったREも70年代後半に入ると、突然沈黙が訪れたかのように新規のRE搭載車は現れなくなった。そして1978年、満を持しての「サバンナRX‐7」の登場となる。サバンナの名を引き継ぐ純粋なRE専用モデルとして、12A型が搭載された。このRX‐7の登場に合わせてRX‐2、RX‐3、RX‐4を終了させ、ここにREスポーツモデルが一本化された。

 以上の系譜に当てはまらない車種が1つある。1974年登場のロータリーピックアップである。北米市場で人気の出始めたトヨタやダットサンの小型トラックに後れを取らぬようにと、フォードはその製造をマツダへ依頼した。これが2代目プロシード(1971年)であり、フォード・クーリエであった。マツダは、間もなく自社ブランドの販売分を13B型RE搭載に切り替えた。しかしながら販売台数は伸びず、1万5000台ほどが生産されたのみと推定されている。そもそも高額(倍額に近かった)を出すくらいなら、でかいトラックを買いたくなるのがアメリカ人の心情だったのではないだろうか。

>>【画像20枚】家の地下室に大型パーツを保管している。ボディパネル、ドア、ウインドー、ドライブトレインなど、R100からRX-7まで長年にわたって集めたもの。外のプレハブ倉庫にあふれるほどあったマツダ専用サイズのホイールなど



>> ウッドパネルの美しい室内もオリジナルのまま。三角窓のすぐ下に付くドアオープナーは、前に倒すとドアロックするという優れもの。またオリジナルのAMラジオの外装はそのままに、中身をRX-7から流用したAM/FMラジオに変えてある。円形だったシフトレバーのトリムだけは、好みで角型へと替えた。





>> テールゲートにある「ROTARY POWER」の文字はオプション設定のステッカーだった。ベッド下には今でもオリジナルのスペアタイヤを備えている。平たいテールパイプもオリジナルのものだ。





>> バッテリーがベッド下の右側に位置するのもロータリーピックアップの特徴。飛び石で塗装がはげているが、あえて対策は施していない。オリジナルの白いピンストライプは、なんと筆の濃淡の跡が残る手書きだ。







>> 乗用車と何ら変わりのない13B型REが搭載されている。5年前にエンジンはレストア済み。キャブレターには懐かしい日立のマークがはっきりと確認できた。



【3】に続く
ノスタルジックヒーロー 2011年 10月号 Vol.147
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ニッポン旧車の楽しみ方 第3回|1973年式 マツダ RX-2(全3記事)

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 【1】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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