ルーフとサイドラインのエンドレスブルーがアクセントになったプリンススカイライン1900DX。押し出しの強いフロントマスクなどのスタイリングばかりでなく、その走りにも驚くべき性能が隠されているのだ。
【プリンス スカイライン 1900DX Vol.2】
【1】から続く「結局、プリンスのクルマを手に入れたいという気持ちを抑えられなくなってしまいました」
すぐに、クルマを譲り受ける交渉がスタート。これまでにエンドレスがレストアしてきたクルマの話や、クルマの将来についてもしっかりと説明し、交渉が進められていった。
前オーナーにとっても、大切なクルマだったため、共通の友人を介しながらも、お互いの気持ちが分かりあえるまでの関係を築き、最終的に譲り受けることが決まった。そして引き取り当日。
「クルマを引き取りに行った時、オーナーのお母さまがいらっしゃいました。ご主人のおクルマだったので、懐かしまれていましたね。その瞳には涙がたまっていまして、この大切なクルマをしっかりと再生しなければ、と『お預かり』する気持ちで引き取りました」
>>【画像37枚】車検を取ってから、急ピッチでバラシの作業に入った。テールフィン部分は最上部からちょうど2つに分かれるように、パーツ分割されているリアフェンダーなど。いずれ隠れてしまう場所であってもしっかりと処理をする 手に入れたクルマには書類がなかったが、ワンオーナーで、前オーナーが地元でも有名な方であったことが功を奏して、無事、車検を通せることに。
エンドレスでは、常に走りと安全、快適に乗れるクルマを追求してきた。レストアも同じ考えで、サスペンションを組み替え、ブレーキには最新技術を投入。その際、構造変更が必要となるが、作業を進めるには、一度、車検を通す必要があったのだった。
レストアは、まさにすべてをばらして、一から組みあげる作業だったが、そのレストアのスピードには驚かされる。クルマがエンドレスのガレージにやってきたのが2016年10月、そして、レストアが終了したのが2017年の1月。クオリティーを維持しながらも、完成まで3カ月というスピードは驚異的。花里社長の周りに集まってきた技術屋が「よしやってやろう」と意気投合しなければ、実現しなかった、奇跡のレストアであった。
エンドレスでは、今後も旧車のレストアを予定しており、次なるクルマが気になるところ。そこで本誌では、エンドレスが再生する素晴らしいクルマたちを、毎号にわたって追っていきたいと考えている。
SHOP INFOMATIONエンドレスアドバンス 花里 功社長
若い頃からクルマにあこがれ、妥協しない姿勢でクルマづくりを続けてきた花里社長。真面目なモノづくりとその人柄が多くの仲間を集め、今回のレストアを成功させた。何よりも人に喜んでもらえることをモットーにしている。
見た目はきれいな状態だったが、試運転すると、どうしてもオーバーヒートの傾向が出てしまうエンジンだった。その原因を探るべく、オーバーホールを行う。ばらしたエンジンの内部を清掃すると、ウオーターラインから大量のゴミやカスが出てきた。念のためにラジエーターも専門業者に見てもらったところ、ゴミやカスが詰まっていたという。オーバーヒートの原因はこれだったのだ。最後にエンジン本体にも塗装をし、清掃、チェックをしながら組み上げる。
点火系の強化のため、純正プラグコードを永井電子機器に送り、ブルーポイントケーブルを製作。エアフィルターケースは赤い結晶塗装を施して、エンジンルーム内のアクセントとなった。もちろん随所にエンドレスパーツを使用。
エンドレスでは旧車のレストア時に必ずフロントブレーキをディスクに変更している。これは、クルマである以上、安全に走行できなければいけないという信念によるもの。車検では構造変更の手続きをしたり、申請も大変なのだが、ブレーキへのこだわりは一貫している。専用のキャリパーキットを作り、最高のパフォーマンスを発揮できるように、最新のパーツを組み込んだ足回りは、現行のクルマに引けを取らないほどの、ドライビングフィールと絶対の安心感をもたらしてくれるのだ。
ブレーキシステムはプリンススカイライン用に開発されたもの。ローターにはEスリットローターを採用。強い制動力と滑らかにパッドを削る2つの効果を発揮する。ホイールはENKEIのネオクラシックシリーズENKEI92を履く。クラシカルなスタイルを最新製法で復活させたモデルだ。
初出:ノスタルジックヒーロー 2017年6月号 vol.181
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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