発売前月、耐久レースで優勝した「GTX」のスペックのまま市販された「GTR」|1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR Vol.1

黒塗りのボンネットはGTRの標準仕様だった。その後、他のバリエーション用に「GTtypeR型黒塗りボンネット&GTtypeR型ストライプ」はオプション設定となる。

       
【情熱のスポーツユニット】
他人とは違うクルマに乗っている、という優越感や満足感は、旧車乗りの自己主張そのもの。
その極みとも言えるのが、スポーツ仕様のエンジン搭載車を所有することだろう。
高圧縮比、複数キャブレター、ダブルオーバーヘッドカムシャフト、5速マニュアルミッションなど、クルマ好きの心をわしづかみにする、ホットなメカニズムが組み込まれたクルマたち。
数ある中から選び出した5種類のスポーツユニットを眺めながら、ぜひ妄想をふくらませてほしい。

【1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR Vol.1】

 ベレットシリーズ最後の追加モデルとなるGTRは、1969年9月に発売される。発売前月の8月に開催された鈴鹿12時間レースで優勝したベレットGTXと同じスペックを備えたモデルで、まさにサーキットで生まれた生粋のGTだったのだ。ベレットは国産車で最初にGTの名を冠したモデルであり、このことは当時のカタログで大きく主張している。それまでの国産車にない次元を超えたスペックを有した車種でもあった。

 4輪独立懸架や1tを切る軽量ボディも運動性能アップに大いに貢献。そしてソレックスのツインチョークキャブレターによる吸気音は、トヨタのツインカムとは違った独特なサウンドであり、ドライバーにもっとアクセルを踏み込めと煽ってくるような錯覚を与える。ショートストロークで小気味よく回るG161W型DOHCエンジンをより官能的に演出する。もちろんレースでもいすゞのツインカムエンジンは、スカイライン勢が台頭する以前は勝利のユニットとして名声を得ていたのだ。

>>【画像17枚】ブラックで統一された室内は、現代のクルマと違って走りを意識したスパルタンな設定。 手を加えることなく、オリジナル状態を保っているインパネ回りなど



エンジンは、1.6LのG161W型4気筒DOHC。117クーペと同じユニットで、ショートストロークで小気味がよく回る。エアクリーナーカバーも117クーペと同様のタイプだが、空気取り入れ口の長さはショートタイプとなっている。ここもオーナーがこだわる、オリジナル仕様だ。




工具類やジャッキもオリジナルのまま。スーツケースはオーナーのコーディネートによるもので、小旅行にぴったり。20歳代のころは、奥さまとよくドライブに行ったいう。







ボディカラーは前期型にしか存在しない名称のメープルオレンジ。ストライプも当時の雑誌やカタログから寸法を割り出して完ぺきに仕上げている。



1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR(PR91W)
SPECIFICATION 諸元
全長 4005mm
全幅 1495mm
全高 1325mm
ホイールベース 2350mm
トレッド前/後 1260 / 1240mm
最低地上高 195mm
室内長 1480mm
室内幅 1240mm
室内高 1060mm
車両重量 970kg
乗車定員 4名
最高速度 190km / h
登坂能力 0.488°
最小回転半径 5.00m
エンジン型式 G161W型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量 1584cc
ボア×ストローク 82×75mm
圧縮比 10.3:1
最高出力 120ps / 6400rpm
最大トルク 14.5kg-m / 5200rpm
燃料供給装置ソレックス型ツインチョークキャブレター×2
燃料タンク容量 46L
変速機 前進4段 / 後退 1段
変速比 1速 3.467 / 2速 1.989 / 3速 1.356 / 4速 1.000 / 後退 3.592
最終減速比 3.727
ステアリング型式 ラックピニオン
サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン / ダイアゴナルリンク式スイングアクスル
ブレーキ前/後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 165HR13
発売当時価格 111.0万円

【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年4月号 vol.180
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR(全3記事)

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photo:TARO KODA/幸田太郎(Studio Roots)

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