「僕はZ信者。それもS30フェアレディZが一番好きなんです」|1975年式 ダットサン 280Z Vol.2

ブウさんの自宅は、カリフォルニア州サンノゼ市南部の丘陵地に造成された新興住宅地にある。この地域は年間を通じて晴天の日が圧倒的に多く、そのうえ日差しが強い。普段はカバーをかけて車両を保管しているものの、弟に買ってあげたという1975年式280Z(左)はボディの傷みが進行していた。ブウさんは現在、この家からクルマで数分の場所にあるアパートに住んでいるそうだ。

       
手に入れにくいからこそ、手に入れたい……この気持ちは世界共通なのかもしれない。クルマ好きの日本人の一部が左ハンドルの輸入車に乗りたいと思うのと同じように、アメリカのニッポン旧車好きの中ではJDM(日本国内仕様)にこだわる人もけっこう見かける。今回取材したオーナーも「オリジナル」と「ローマイレッジ」にこだわりがあるようで、自分好みのS30Zをコレクションしていた。

【1975年式 ダットサン 280Z Vol.2】

【1】から続く

「僕はZ信者。それもS30フェアレディZが一番好きなんです。ダットサン510じゃなくて日産ブルーバードSSSは好きだし、あとハコスカも大好き。本当のJDMだと思うから」
 ハキハキと自己紹介した。クルマを好きになった理由は、とブウさんは自分の子供のころを思い出し始めた。
「両親はクルマにこだわりはありませんでした。近所にはローライダー乗りが結構いたんですけど、なんて言うか、興味がちょっとずれていると言うか、人のタイプが違うというか、どことなく会話に入っていく感じではなかったんです」

 クルマに興味はあるものの、一体自分は何が好きなのか。童心には見定められなかった様子がその言葉に浮き出ていた。ブウさんは続けた。
「運転免許を取って、あのころはホンダがはやってたからCR‐Xを欲しいと思ったんですが、『あんなクルマ、小さすぎる』と親に反対された。そんなことがあって、次にいとこが手頃だからとダットサンを紹介してくれました。そんな古いクルマ、と初めは思ったんですけどね、調べてみて『これだ!』とね、ビビッときたんです」

 目前に閃光が走り、ブウさんがZ信者となった瞬間だった。

>>【画像14枚】ステアリングは木に模した樹脂製、シフトノブは木製。「ローマイレージ!」と叫ぶブウさんが指差した4万5153マイルを示していたオドメーターなど



当時のタイヤがまだ装着されたままだった。175HR14、ブリヂストン、MADE IN JAPANの文字などがはっきりと確認できたこのタイヤは、もしかすると新車時のタイヤそのものだったのかもしれない。

【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 ダットサン 280Z(全6記事)

関連記事: ニッポン旧車の楽しみ方

関連記事: 日産



【1】から続く

text & PHOTO:HISASHI MASUI/増井久志

RECOMMENDED

RELATED

RANKING