スタイルは、出身地である宮城県のアート車を意識した、いわゆる「東北流」を基本としたもので、大技から小技までみごたえあふれるアートパーツを満載している。
注目のキャブ周りでは、宮城県の老舗の仙南ボデーの手腕を借りつつ、シートキャリア、ミラーステー、ハシゴの3点を「丸パイプ+曲げ加工」を駆使した東北流スタイルで仕上げるほか、ボトムエンドには、常陸美装がこしらえた美しい舟型バンパーをコンビネーションしている。
また、フロントマスクにはウイングマークに重ねるように本モノの闘牛のツノを装着して唯一無二のフェイスルックをアピール。そのほか、弁当箱やグリルアンドン、ドアに配した丸アンドン、星抜きデザインをあしらったドアアンダーパネルなど、ディテールにもバラエティに富んだレトロアイテムを多投している。
一方、荷台周りにおける最大のビューポイントは、潤太郎印が筆を執ったダイナミックなリア観音扉のペイントで、構図、タッチ、カラーリングのすべてにハイレベルを追求し、優れた完成度を獲得している。また、同様の「波絵」を冷凍機のカバーや3つの燃料タンクにも描くほか、工具箱には奥さまの名前に由来するニックネームのアンドンをセットするなど、荷台下のデッドスペースにも他車に類を見ないオリジナリティを注入する。
故郷、東北に対するオマージュ精神をふんだんに盛り込みつつ、仕事車らしいスタイルを構築したこのクルマは、アートの魅力を体現する1台だ。
【写真7点】大技から小技の東北流。カミオン2008年9月号トップアートをもとに再構成