バッグドで美しくスラムド(MOONTECH × BMW M3)

旧欧州車のモディファイはスタンスシーン黎明期からアメリカやヨーロッパ諸国で行われていた。日本でも多くの名車を輩出してきたが、現在版のテクノロジーとチューニングを入れ込んだのが、ムーンテック製作のE30M3。'80年代ユーロのレストモッズを存分にご堪能あれ!

       
現在のようにアメリカでJDMがスタンダードになる以前、’80年代から’90年代にかけてスピードカスタムの主流はポルシェやBMW、VWを中心とした欧州車がメインストリームだった。そのため、巨大かつ継続的なカスタムマーケットを持つアメリカでは、当時と変わらず現在も新たなアプローチによる欧州ベースのレストモッドが誕生している。

そんなシーンで今、改めて注目を集めているのが’80年代に誕生したBMW。中でもパフォーマンスモデルとして各国のツーリングカーレースを席巻したE30 M3は、永遠のスタンダードとして題材になり続けているのだ。このムーブメントは日本国内でも大きく膨れ上がり、欧州クラシックをベースとしたカスタムにも注目が集まっている。

中でもムーンテック田口サンが作り上げたM3は、レストモッドの最適解としてWEKFESTやSNJでも高い評価を受ける1台。若手ビルダーとして数多くのユーザー車を手がけたムーンテックが、その忙しい合間を縫って作り上げたのがこのM3というわけだ。「このM3はWEKでお披露目してアワードも受賞したのですが、まだまだ暫定的な仕様だったんですよね……。せっかくならやっぱりエンジンも作り直したくなるじゃないですか。だからエンジンをやり直したり、トータルで3回くらいディテールを変更して完成度を高めていっているんです」

ボディやサスペンション、インテリア、エンジンといったすべてのパートを抜かりなく作り込むプロジェクトは、トータルで1年半にも及んでいる。もちろん、完璧を目指した作り込みは、田口サン自身がM3に惚れ込んでいるだけでなく、オーナーである奥さんにカッコイイM3を乗り回してもらいたいという思いがあったから。「奥さんのアイちゃんはもともとBMWには興味がなかったんですよね。付き合っていた頃はZ33のシャコタンに乗っていたんですが、僕がE30の325に乗っていて、助手席から興味を持ち始めたんです。結果的にBMW好きになっちゃって、M3もE36やF80を乗り継いでいたんですが、やっぱりE30が欲しいってなったみたい。まぁ、僕としてもE30好きなので、それなら長く楽しめるように思いっきり作り込んじゃおうって考えたんですよ」

M3を探しはじめたところ、見つかったのはアイディングのエンジンを搭載したこのクルマ。M3の中でもスペシャルなアイディングパワーS2コンプリートとくれば、ベースとして不足はない。すぐに手に入れて、まずはボディをフルストリップするところからスタートとなった。フルレストア&スムージングとともに純正のアルピンホワイト2でリペイントを行い、さらにエンジンルームはシェイブドベイ&ワイヤータックでスッキリ。もちろんモールやウエザーストリップなどはすべて新品に交換済み。

インテリアもフルトリムで仕上げつつ、ロールケージもレザー張りでフィニッシュするなど、第一段階は限られた時間の中でも納得のいく作り込みが行われた。もちろん、デビューした段階では暫定仕様。この段階ではエンジンや制御系には手が入っていなかったので、パフォーマンス的には納得していなかったとのことだ。そのため次のステップとして4スロ化や配管類といったディテーリングを行い、完璧な状態でSNJに挑んだというわけだ。

「やっぱりこのエンジンなら4スロ化したいじゃないですか。そうなるとノーマルの制御系は使えないので、ECUはLINK制御に変更になります。さらに見た目がイマイチだったウォーターラインなどは、XRPのメッシュ&クラムシェルコネクターといった細部まで見直すことで理想的なカタチに仕上がりましたね」

ようやく納得の完成形にたどり着いたM3は東京オートサロンでもディスプレーされ、大きな反響を呼んでいる。ここまで仕上がると逆に乗り倒すには気が引ける……と思いきや、オーナーのアイちゃん的にはクルマは走らせてナンボ。普段履きとして子供を乗せて走り回る予定なのだとか。それに合わせて電動エアコンを見えないようにセットするなど、奥さんの希望を踏まえたSHOW&GOを実践できるパーフェクトコンディション。実際に走らせるためのクルマとしての作り込みこそ、最高到達点と呼べる仕上がりでもあるのだ。

【画像11枚】最新のチューニング&モディファイを融合させたエンジンルーム、ココア×ベージュといったブラウンを基調としたインテリアなど、BMW M3の全貌はココから明らかに!!

(SPEC)
●OWNER:AI TAGUCHI(@aichan_m3)
●BASE CAR:1989 BMW M3[E30]
●INTERIOR:EVO2 FRONTSPOILER , SPORTEVOLUTION LIPSPOILER , DTM REARWING , AIPINWHITEⅢ ALL-PAINT
●WHEELS:OZ FUTURA 17INCH REBARREL
●TIRES:TOYO PROXES SPORT(F=205/40-17 / R=215/40-17)
●SUSPENSIONS:PLOOM AIRSUSPESION , AIRLIFT 3P MANAGEMENT
●TUNING:IDINIGPOER 2.3L→2.5L S2 COMPLETE ENGINE , OS-GIKEN METAL , SHAVED ENGINE BAY , WIRETUCK , BRAKEMASTER LESS , ABS LESS , XRP CLAMSHELL HOSE , CRUIZE ELECTRIC AIRCONDITIONER(HARDLINE)
●BRAKE:WILLWOOD DISKBRAKE
●INTERIOR:INTERIOR PANEL FULL LEATHER REUPHOLSTERY , RENOWN STEERINGWHEEL , RECARO BACKETSEAT×2(LEATHER REUPHOLSTERY) , ONE-OFF ROLLCAGE(LEATHER WRAPPED)

source:ムーンテック 0270-61-7495

Photo : Akio Hirano Text : Daisuke Watanabe

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