「涼子は私なんですよ」クルマを全く知らないチームで描き始めた人気クルマ漫画「オーバーレブ!」|作者、山口かつみが語る制作秘話とは!? Vol.1

       
「涼子は私なんですよ」

 といって話し始めた山口かつみさんは、身長も体重も日本人平均を軽くオーバーする大男だ。

 当時「頭文字D」をはじめクルマ漫画全盛の中、「ヤングサンデー」編集部でもクルマ漫画を求める声が大きく、白羽の矢が立ったのが山口さんだった。

 実は山口さんは、バイクには乗っていたが、自動車運転免許がなく、クルマのことは何も知らない状態。女子高生の初心者が走り屋になるというざっくりとしたアイデアだけで連載の準備がスタート。そんな中、自動車運転免許を取得している最中の彼のもとにAW11が届けられたのだという。

「クルマは詳しくなかったのですが、MR2は友人が乗っていたので少し安心感がありました。乗ってみるとバイクに近い感覚で楽しくて、漫画のためという理由もあったのですが、毎晩峠を走っていました」


 なるほど、確かにリアル涼子状態。連載が開始されても峠を走る生活は続いていた。実は連載開始当初は最悪の状態だったという。


 クルマのことをまったく知らない担当者となぜか編集部から無理やり付けられた、これまたクルマを知らないシナリオライター、そしてカーアドバイザーという謎のスタッフで進められていたからだ。

その状態は1年続き、漫画の人気も上がらなかったという。


  「本格的に人気が出たのは担当が替わり、クルマ好きの人になったことで私と2人で話を組み立てられるようになったからですね。

ちょうどリプリー編からです。

アンケート1位を獲得し、この内容が収録された5巻が大ヒットを記録しました」



漫画家の仕事場は山のような資料と大きな原稿用紙を置くことのできる広い机というイメージがあったが、現在は写真に写っているMacintosh、タブレット、3つのモニターですべての原稿を仕上げることができるという。



小さなコマでも拡大して描き込むことが可能。青いラインはアナログ時代でいうところの鉛筆跡。その下書きの上でペン入れ作業の意味合いに近い描き込みを行うのだが、仕上がったあとは消しゴムの必要がなく、下書き部分のレイヤーを削除、または隠すだけ。そのため同じ構図の絵を何度でも描くことが簡単になったとのこと。


オーバーレブ! 連載当時に書きためたAW11の絵。AW11だけでテーブルいっぱいになるほど。この他に主役級他3人の愛車をはじめ、登場する車両の資料が大量に残っている。



ハチマルヒーロー 2019年 11月号 vol.56(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text : Hachimaru Hero/編集部 illustration : Katsumi Yamaguchi/山口かつみ

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