不動車やベース車を買い集め、3台のいいところだけを抽出【2】1970年式 スバル R-2 デラックス

「熱気を逃がすためにエンジンリッドを開けて走ることが多いのですが、『後ろ、開いたままですよ!』と、よく話しかけられます(笑)」

       
一番大事なことは速いことか? それとも楽しむことか? そんな疑問に対する1つの回答を見つけた。
参加しているドラッグレースでは、いつもビリ。だが、オーナーの顔はいつも笑顔に満ちている。
そう、楽しむことこそ旧車チューンに一番大事なのだと、彼と彼の「スバルR-2」は教えてくれた!


【1970年式 スバル R-2 デラックス Vol.2】

【1】から続く

「『若いころにあこがれたクルマに、オヤジになってやっと乗れた』みたいな話はよく聞きますが、それは何も高級車やスポーツカーに限ったことではありません。自分にとっての『あこがれの1台』は、R‐2だったんです」

 スバルR‐2を手にした心境をこんなふうに話してくれたのは、オーナーだ。なんでも初めて運転免許証を取得した帰り道に、バスの中から中古車屋さんの店先に並んでいるのを発見。翌日、買いに行こうと出かけたものの、そのお店を見つけられずに断念してしまったという。

 以降、ホンダライフ、B10サニー、トヨタ1600GTなどの旧車に乗ってはみたが、やはりR‐2の面影を消し去ることができず、12年前から不動車やベース車を買い集め、3台のいいところだけを抽出して今回紹介するR‐2のスタイルを完成させてきた。

 全体のイメージは、1/4マイルの走りにすべてを賭けるドラッグレーサーだ。ここにたどり着いた過程についてエピソードを語ってくれた。
「手にした当初はVANやレーシングメイトのステッカーを貼ったカフェレーサースタイルを目指していました。ところが、だれでも参加できるドラッグレースがあると聞いて見学に出かけたところ、その魅力に取りつかれてしまったんです」とのこと。その思いが強く表れているのがエンジンルームだ。


>> 【画像33枚】バンパーレス、マーシャルで一番デカいドライビングランプ、さらにはSSグレードにのみ付いていたノーズフィン(両サイドのスポイラー)の力を借りて、ファニーな顔に迫力を足すフェイスメイクなど

 機能的であるのはもちろんのこと、ドラッグレースに参加するクルマたちは、エンジンルームの見栄えがいいと理解。アメリカンな小道具
を用意して、美しくも楽しいエンジンルームの製作に精力を傾ける。代表的なのが、ルーカス製オイル添加剤のボトルを使ったオイルキャッチタンクだ。ブローバイからのオイルの吹き出しに悩んでいたとき、たまたまそばにボトルがあった偶然から生まれたアイデアといってしまえばそれまでだが、サンデーレースのイメージ演出にピッタリなアイテムだといえる。

 速さのために使ったパーツは、最上級スポーツグレード「SS」が純正で装着していたソレックス36PHHキャブの流用だ。同時にインテークマニホールドやアクセルリンケージも移植したため、大幅な加工もなく、すんなり30㎰/3.7kg‐mから36㎰/3.8kg‐mへと微力ながらもパワーアップ。エアクリーナーの台座を赤く塗ったり、ファンネルをメッキにしたりと、ここでも見せるエンジンへのカスタムを欠かしてはいない。




>> 映画「アメリカングラフィティ」のドライブインのシーンでおなじみのグッズ、バーガートレイを助手席の窓に。これがカップホルダーの代わり?





>> インパネ右にあるメーターは、温度計とクオーツ時計。その下にあるクレイスミスのカップには、配線がまとめて入れてある。





>> ナルディのステアリングはφ360mmのクラシック。組み付けには当時もののボスを使っていた。「家庭用品が流用できるチープさがいい(笑)」とおっしゃるが、その楽しさが室内にはあふれている!

1970年式 スバル R-2 デラックス

SPECIFICATIONS 諸元
● エクステリア:ダッジ・バイパー純正イエローオールペイント、前後バンパーレス、けん引フック、
R-2SS用ノーズフィン、マーシャル製902ドライビングランプ×2、FIAMM製エアホーン、
レイヨットタイプフェンダーミラー、自作エアダクト、スーパーデラックス用エンジンリッドエンブレム
● エンジン:0.5mmオーバーサイズピストン、R-2SS用アクセルリンケージ、
ルーカス製添加剤ボトル流用オイルキャッチタンク
● 吸排気系:R-2SS用ソレックス36PHHツインキャブ/インテークマニホールド
● 点火系:日立製レッドコイル、永井電子機器製シリコンプラグコード
● 燃料系:永井電子機器製電磁ポンプ
● サスペンション:(F)キックス製ミニトラック用ショートストロークショックアブソーバー、
トーションバーコマずらし加工、(R)トーションバーボルト緩め加工
● ブレーキ:オートバイ用ブレーキマスターシリンダー流用
● インテリア:ナルディ製クラシックステアリング、オートゲージ製シフトライト付き5インチタコメーター、
大森製タコメーター、汎用電流計/電圧計/気温計/クオーツ時計、ヒューズボックスダッシュボード移設、
Longacre製キルスイッチ、汎用アルミシフトノブ、シフトレバークッション材巻きつけ加工、
純正シートヘッドレスト取り外し、シンプソン製2点式シートベルト、ドア内張りステンレスロールシート張り替え、
リアシート取り外し(スナップオン工具/ケミカル/消火器/スペアタイヤディスプレー、
エンジンサービスホールパンチングアルミ板張り
● タイヤ:グッドイヤーGT80 145/80R10
● ホイール:(R)ダイハツ純正ホイール


【3】に続く


初出:ノスタルジックスピード vol.022 2019年11月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式 スバル R-2 デラックス(全3記事)

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【1】から続く

text : AKIO SATO(rsf)/佐藤アキオ(rsf) photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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