国産66機のデータ掲載! ターボエンジン百花繚乱。時代のエンジンたちを登場順に紹介【8】80年代のターボエンジンの系譜

ハチマルを彩ったターボエンジンたち

       
1980年代初頭に花開き、百花繚乱となったハイパワー系ターボエンジンたち。
メーカー別に登場順で年を追って紹介していく。

【 ターボエンジン百花繚乱 Vol.8 80年代のターボエンジンの系譜】

【7】から続く

   
「過給機」。それは、エンジンに強制的に空気を送り込む装置で、より大きなエンジン出力を可能にするという魔法のようなアイテムだ。エンジン出力をより高くする近道は排気量を大きくすることだ。しかし、それはエンジンの大型化と重量増だけでなく、より大きなピストンを動かすために燃費も悪くなる。そして、何よりも税金が高くなることにつながる。たとえば、最高出力は200psまで上げたいが、それには排気量が2.5L必要となる。逆に、排気量は2Lに抑えようとすると、最高出力は150psまでしか出ない。その50 psの差を埋めるためにはどうしたらいいのか……そんな相反する悩み事の解決策が過給機だったのだ。

 この過給機にはターボとスーパーチャージャーの2つがあるが、タービンを回してコンプレッサーで空気を圧縮し、エンジンに強制的に送り込むという仕組みはどちらも同じ。その違いはタービンを回す動力で、ターボは排ガスを利用、スーパーチャージャーはエンジンの動力を利用している点にある。また、特性にも違いがあり、簡単に言ってしまえば高回転でよりハイパワーが得られるターボ、低回転域でのレスポンスとパワーが際立つスーパーチャージャーで、ハイパワー化が進んだ1980年代はターボが好まれた。既存エンジンへの過給機追加もターボの方が簡単というメリットもあり、多くの車種が生み出されたのだ。

 では、日本初のターボエンジンは何か? それは1979年10月に登場した日産のL20ET型。ここからターボエンジン時代に突入するわけだが、1990年代前半までに生み出されたターボエンジンは何機あるか知っているだろうか。その数は型式ベースで70を超える。これはガソリンエンジンだけの数字なので、ディーゼルターボを加えれば、その数はさらに増える。たとえばインタークーラーの追加や新型タービンへの変更といったエンジン型式に変更がない大幅アップデートも加味すれば、三桁に届くほどの勢いなのだ。




>> 【画像44枚】各社の歴代ターボエンジンなど



 上のエンジン一覧を見れば分かるが、日産のターボ攻勢が顕著で、それにトヨタが続いているという構図だ。この2メーカーは車種もエンジンもラインナップが多いので当然だが、その次に三菱の多さが際立っており、「フルラインターボ」を旗印にした戦略を取っていたことを表している。半面、ホンダはラインナップが少ない。1980年代はホンダのターボエンジンがF1を席巻していた。にもかかわらず、市販車が少なかったのは残念でもある。また、スズキとダイハツを中心にした軽自動車のターボ戦争も盛り上がりを見せ、アルトワークスやミラTR‐XXを代表とするリトルモンスターが誕生している。一方、年式では1982年、1983年、1987年が比較的多いといえるが、その差は小さく、1980年代を通じて次々にターボエンジンが誕生していた。

 エンジン技術、ターボ技術の進歩も目覚ましい。キャブからインジェクション、SOHCからDOHCへとエンジン自体が高性能化していくとともに、ターボもタービンの小型・効率化や、シングルからツインなど大幅に進化した。デビュー当時は急激な過給の立ち上がりからドッカンターボといわれたが、1980年代後半にはネガティブ要素は薄くなり、パワーは280psに到達した。こうして見ると、1980年代はまさにターボの時代だったのだ。




初出:ハチマルヒーロー 2016年 7月号 vol.36
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ターボエンジン百花繚乱(全8記事)

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text : Rino Creative/リノクリエイティブ

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