【初代C30ローレルの軌跡 3】開発符号「㊥(マルチュウ)」と呼ばれた初代ローレル。その開発時の企画ポイントを調査

1968年10月に安全対策の強化を理由にした仕様変更が行われ、この時にワイパーアームが平行リンク式に変更された。1970年8月にはセダンのマイナーチェンジが行われ、インストルメントパネルは、ハードトップに準じた立体的なソフトパッド張りとなる。

       
ハイオーナーセダンを目指して日産自動車が開発、1968年3月に発表、翌4月に発売された初代ローレル。C30の型式名を持つこのセダンが2018年に発売50周年を迎え、その軌跡をノスタルジックヒーロー本誌で記録するために、日産ローレルC30クラブの野村充央さんに寄稿していただいた原稿を、55周年の今、Nosweb.jpでも7回に渡って連載する。

【 初代C30ローレルの軌跡 Vol.3】

【2】から続く

 C30ローレルの開発にあたり、その企画の素案を調べてみた。


1: ハイオーナーセダン㊥
 ブルーバードよりもう少し大きい個性的なクルマの需要を見込んだ日産は、ハイオーナーセダン㊥(マルチュウ)の開発符号の新・中型乗用車の設計に着手した。GMの設計手法を参考に、企画段階にあった次期ブルーバードとの姉妹車方式により、2車を同時進行で効率的に開発することを狙っていた。生産工場も最新鋭の追浜工場に一元化することで、生産管理・物流、販売会社との情報の共有化など、あらゆる面でメリットが出せると考えられていた。
 両車の構成部品も共用性が高いとなれば、生産は追浜工場、販売は、サービス上の観点から最強力な日産系販売会社で統一。新鮮なデザインと数々の新技術を盛り込んだ新型ブルーバードと、それになおあきたらぬ個性派のお客さまには、新・中型乗用車をオーバーラップさせて売るという戦略で、ライバルのトヨタ・コロナに対し、恐るべき連合軍となるともくろんでいた。
 この新・中型乗用車、略して㊥は、知的な新型ブルーバードに対し、より粋なスポーツ・イメージを持った紳士のクルマ、いわゆる「ハイオーナーセダン」がコンセプトだった。
 サイズ的には、130セドリックとP410ブルーバードの中間に位置付け、別表のような寸法が決められた。

2: パワートレーン
 搭載エンジンは、当初510用として開発されたL13型をモディファイしたL18型を採用することになっていたが、生産工場が旧プリンス村山工場に変更されたことから、新型スカイライン用のG15型をモディファイしたG18型に変更された。

3: サスペンション
 リアサスペンションに、新開発のセミ・トレーリングアーム式独立懸架方式を採用。510ブルーバードで先行採用されたが、もともとC30車用として開発されていた。


モデルラインナップ

1: セダンシリーズ(1968年3月11日発表、4月6日発売) 
 車種グレードは、従来のスタンダードという名称を廃し、デラックスに一本化、標準仕様をデラックスA、上級仕様をデラックスBとした。各仕様にそれぞれ、3速コラムシフト、4速フロアシフト、自動変速コラムシフトが設定され、6車種構成となっていた。
 モデル末期には1800GL(1970年8月)、2000GL(1971年7月)の追加があり、最終的なセダンのラインナップは13車種構成となった。

2: ハードトップシリーズ(1970年6月発売)
 車種グレードは、1800(デラックス)、2000デラックス、2000GXの3グレード構成。4速フロアシフト、自動変速フロアシフトが設定され、基本6車種構成となっていた。基本と記載したのは、2000GXではさらにパワーウインドー付きが設定されたことから、正確には8車種構成となっていた。
 モデル末期には、2000GXの5速フロアシフト車がオプション設定されるとともに、従来のハイオクガソリン仕様に加え、レギュラーガソリン仕様が追加された。最終的なハードトップのラインナップは、10種類のグレード構成となった。

>> 【画像28枚】オリジナルの姿を残す美しい個体である1969年式ローレル・デラックスBなど



1971年7月のマイナーチェンジでセダンに2000ccモデルが追加される。フロントグリルの意匠が変更されて一体型となり、表情も変わった。テールランプまわりも細かな意匠に違いがある。


【4】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

初代C30ローレルの軌跡(全7記事)


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【1】【2】から続く

text : MITSUOU NOMURA/野村充央 協力 : 全日本ダットサン会歴史研究部 資料提供 : 日産ローレルC30クラブ、野村充央

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