驚くほど軽く、強い。重量へのこだわりはまさに零戦|日産 サニー クーペ【4】

タコメーターはスミスのクロノメトリット。その両サイドに大森の水温と油温計をレイアウトする。タコメーターのイエローゾーンは9500rpm、レッドゾーンは11000rpm!

       
岡山県倉敷市で、当時はドライバーとしてレースに参戦し、現在もステアリングを握りながら、プライベートチューナーとしてA型エンジンのチューニングを行なっているオーナー。サニーユーザーの間では、かなり有名な存在だ。現在も、速くしたい一心でチューンナップを続けて進化するB310は、エンジンはもちろん、ボディからブレーキまで、そのスペックはとてもプライベーターが仕上げたものとは思えない。

【珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る 日産 サニー クーペ Vol.4】

【3】から続く

 プライベーターは、1ps上げることよりも1kg削ることを先に考えるのが正解。車体の軽量化は、ハイパワーなワークス勢相手に欠かせないことをオーナーはレースの中で身をもって学んできた。以来、軽さに対する執着は文字通りグラム単位。ただでさえ軽いサニーのボディを徹底的にシェイプして、現在のウエイトは乾燥重量で実に675kgをマークする。ボディ補強は重量増につながるタワーバー等のボルトオンパーツは使わず、スポット増しがメインだ。室内の内張はドアパネルのみ。ダッシュパネルも取り払い、薄いパネルで仕上げたコクピット周辺にもムダは一切なく、あの驚異的な軽さを誇った零戦のような作り込みだ。フロント以外はアクリルで、ボンネットやトランクリッドはFRP製となる。他にもドライブシャフトのアルミ化、ローターのベルハットやスペーサーの軽量加工、ボルトをチタン化するなど、あらゆる手がつくされている。675kgというウエイトは、レーシングカーといえど生半可な軽量化では達成できない重量だ。「せっかく削りに削ったのに。最近のタイヤはずいぶん重とーなりよった」と、オーナーはラジアル化したスリックタイヤを残念がる。

 F3000用キャリパーを流用した軽量かつ強力なブレーキや、スバルR2用のマウントとフレーム加工によるエンジンのローマウント化など見所はつきない。そして最近、またひとつ性能が進化。アップデートポイントはトランクの収納ボックスの設計変更で、改良の理由は空気抵抗。「出っ張りが気になって」とオーナー。本物のレーシングカーの速さというのは、こういう緻密なコダワリが支えている。


>>【画像44枚】ムダを廃したコクピットなど。ドライバーに向けてオフセットさせたメーターパネルは軽量なアルミ製のワンオフ品だ



>> コクピットの基調カラーは闘争心をあおる赤。ロールバーはセフティ21の6点式。シートはエバの軽量なケブラーモデルを装着する。





>> 車高調は、全長や減衰力等をフルオーダーしたオーリンズのワンオフ品。スプリングはアイバッハを選択し、レートはフロントが5.3kg/mm、リアが4.3kg/mmの組み合わせだ。





>> フロントのブレーキキャリパーは、当時F3000にも採用されていたアルミ2ピースのブレンボレーシング。ローター径はφ275mm、ブラケットを自作して取り付ける。スペーサーの肉抜きもスゴイ。






>> リアブレーキはAE86用のキャリパーとS13シルビア用のローターのコンビネーション。ローターのハットやトレッドを稼ぐためのスペーサーの軽量化加工に注目だ。





>> リアのスプリングは、ジャッキアップするだけで取り付け、取り外しができる仕組みで、セッティングの変更がスピーディーに行える。

日産 サニー クーペ(HB310)


SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:FRP製フロントスポイラー/バンパー/ボンネット/オーバーフェンダー/トランクリッド、アクリルウインドー(左右、リア)、ボディスポット増し
■エンジン:A12A型改ワークスヘッド仕様(ボアφ77mm×ストローク70mm、圧縮比12.6)、ワンオフチタン製バルブ(INφ41mm/EXφ33mm)、削り出しワンオフロッカータワー、オプションロッカーアーム、ロッカーシャフトタフトライド加工、オプションリフター、JE製ワンオフ鍛造ピストン、クロワー製H断面コンロッド、オプションクランク、TOMEI製80度カム(7.75mmリフト)、ベリリウム製バルブシート
■吸気系:クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション、スライド式ストッロルバルブ
■排気系:ステンレス製ワンオフφ42.7mm等長タコ足、チタン製ワンオフφ60mmマフラー(サイド出し)
■点火系:永井電子機器製レース用CDI
■冷却系:ワンオフラジエーター、SA22C用オイルクーラー流用
■燃料系:ATL製30L燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ、ボッシュ製燃料ポンプ
■駆動系:オプションクラッチ、オプション56Aミッション、アルミ製ワンオフプロペラシャフト、H150デフ(ファイナル3.9〜4.625)、オプションLSD、フォーシング加工(オイル容量アップ&アルフィン装着)
■サスペンション:(F)オーリンズ製ワンオフ車高調、クスコ製ピロアッパーマウント、パイプAアーム/コントロールアーム、アイバッハ製スプリング(5.3kg/mm) (R)オーリンズ製ショック、アイバッハ製スプリング(4.3kg/mm)、中空スタビ
■ブレーキ:(F)ブレンボ製4ポットレーシングキャリパー(F3000用)/φ275mmローター (R)AE86用流用、S13シルビア用φ256mmローター
■インテリア:アバルト製ステアリング、ダッシュパネルワンオフ、スミス製機械式クロノメトリックタコメーター、大森メーター製φ60mmサブメーター(水温、油圧)、A/Fメーター、セーフティ21製6点式ロールケージ
■操舵系:S10シルビア用ステアリングギアボックス
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:レイズ ボルクレーシング メッシュ(F)13×8J -10 (R)13×9J -20


【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産 サニー クーペ(全6記事)


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【1】【2】【3】から続く

text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー) photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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