ハイソカーブーム。ソアラとともにブームを盛り上げたセダンたち【1】その中心にいたソアラ

ハイソカーブームの時代

       
パワー競争、ハイソカーブーム、バブルなど、1980年代は多くのキーワードが上がる。
そのどんな話題にも名前が登場し、この時代の中心の遥かな高みに存在したのがソアラ。
永遠のライバルと語られる「あの」クルマでさえ、ソアラの背中は遠かったのだった。

【 ハイソカーブームの中心にいたソアラ Vol.1】

 1970年秋、東京の晴海埠頭で開催された第16回東京モーターショーに、トヨタはスタイリッシュなスポーツクーペのセリカを出品し、12月に発売を開始した。会場でセンセーションを巻き起こしたセリカは「クーペでもハードトップでもない、スペシャリティーカー」のキャッチコピーを使い、今までにないジャンルのスポーツクーペであることをアピールしている。

 それから10年、トヨタは再び衝撃のスポーツクーペをショー会場に送り込んだ。晴れの舞台は、東京ではなく大阪だ。大阪国際オートショーに、トヨタEX‐8と呼ぶプロトタイプを参考出品したのである。このときのキャッチフレーズは「グランツーリスモ」だった。衝撃のお披露目から4カ月後、トヨタEX‐8は「SOARER」と名を替えて正式発表されている。

 初代ソアラは、驚きのスペシャリティーカーだった。その少し前にベールを脱いだ日産のレパードも破天荒だったが、ソアラはその上を行っている。1980年代は5ナンバーの小型車の全盛期で、ソアラもボディサイズは小型車枠に収めていた。が、2.8Lの直列6気筒DOHCエンジンを積む2800GTを主役の座に据えた。今と違って3ナンバーの普通車やDOHCエンジンは希有で、崇高な存在だ。

 パフォーマンスにおいてソアラは、1世代前のL20型系直列6気筒エンジンを積むフェアレディZやレパードを相手にしなかった。性能面ではスカイラインRSも負けていないが、エレガントさでは遠く及ばない。熟年のオーナーや女性が似合うのはソアラだ。オートマチックも、ライバルは3速ATだが、ソアラは上質で洗練された4速ATを採用している。大人の高性能車はオートマチックで優雅に、という流れに導いたのもソアラの功績だ。

 また、メーターのデザインと機能も大きく変えて、新しい時代の幕開けを告げた。ソアラは日本で初めてデジタルメーターを実用化し、先進性と未来感覚を強くアピールしている。表示できる情報量も大幅に増やせるから、メーターのデザインも変わった。今につながるトヨタの高いクオリティーも、このソアラから実践に移されたのだ。

 ボディカラーにも革命をもたらしている。ソアラはピュアホワイトと呼べる純白のスーパーホワイトをテーマカラーのひとつにした。ソアラが出るまでソリッドのホワイトは、純粋な「白」ではなかった。が、トヨタは塗りの回数を増やすことで「本当の白さ」を出すことに成功。これにより、プレステージ・スペシャルティーカーの上品で優雅さが際立つようになった。そんなソアラに加え、マークⅡ、チェイサー、クレスタの3兄弟、そしてクラウンではスーパーホワイトのボディカラーを選ぶユーザーが急増。これがハイソサエティカー(略してハイソカー)ブームの発端で、1980年代半ばには日本中に白い高級車があふれ返っていた。


>>【画像14枚】GX61クレスタやS120クラウン、あの頃から始まったハイソカーブーム。その中心にいたソアラ




GX71 MARK II

もはや説明する必要がない、ハイソカーの王道がコレ。スタイリッシュなデザインと純白のボディカラー、ラウンジのようなインテリアで、当時の大衆から絶大な支持を受けた。その一方で、2Lツインターボエンジン搭載のスポーツグレードも登場。また、ハイソカーとは相反する街道レーサーのベースとしても人気という一面も持つ。




GX81 MARK II

1988年にデビューした81系マークⅡ3兄弟。先代の71系よりも曲線を多用したエクステリアはよりスタイリッシュさが増し、上質なアッパーミドルサルーンといった装いに。エンジンは全車DOHCになり、ツインターボ仕様のほか、スーパーチャージャー搭載車も設定。また、7年振りに3ナンバー車もラインナップされた。





S130 CROWN

トヨタの乗用車生産50周年の節目の年となる1987年にデビューした8代目。3Lエンジンを搭載するハードトップは、専用ワイドボディの3ナンバー車となったのが特徴。ハイソカーとしてのステイタス性を十分満足させる特別なモデルとして人気を集めた。また、1989年にはクラウン初のV型8気筒エンジン搭載モデルを追加している。





T160 CARINA ED

車格はひと回り小さいが、ハイソカーという点ではソアラのライバルにあたるのがカリーナED。それまでの4ドア車の常識を覆す低いルーフとワイドなプロポーション、そして4ドアピラーレスハードトップを採用し、若年層から圧倒的な人気を獲得。セリカと共有するシャシーの素性の良さもあり、軽快な走りも魅力だった。


【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ハイソカーブームの中心にいたソアラ(全2記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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