TGRF2015で見た日本メーカー初WRC王者の歴史【6】ブランクを置いたWRカーで再びタイトル|トヨタ カローラWRC

2年間の活動休止後、TTEは1998年のモンテカルロラリーでWRCに復帰。車両はグループA規定のセリカからWRカー規定のカローラに

       
TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2015 振り返り

2015年もモータースポーツのオフシーズン突入と同時にメーカーによるファン感謝デーが開催された。注目は20年近い休止期間を経てWRC活動への復帰を表明したトヨタの動向だったが、果たして、日本メーカー初のWRCチャンピオンメーカーは、やはりTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)でファンに向けたGOサインを送っていた。

【TGRF2015で見たWRC王者の歴史 Vol.6】

【5】から続く

 大成功を収めたST185を受け、セリカはさらにST205へと発展するが、この頃にWRC車両の規定見直しが図られた。グループA規定の連続した12か月間に5000台以上の生産が必要という項目は、少量生産による競技専用モデルの発生を防ぐことが目的で、特別な車両が欲しければ5000台を作れという意味だった。

 しかし、トヨタも含めたスバル、三菱の日本3メーカーがこの常識を覆していた。ほとんどのメーカーが容易に手の出せなかったターボ4WDを年間5000台以上のペースで量産。さらに競技車両対策の高性能ベースモデルも毎年リリース。改めて日本メーカーのすごさを感じるが、日本車以外は勝てない状況となったことでグループA規定の見直しが図られた。

 この新たな枠組みがWRカー規定で、生産車に存在しないメカニズムによる車両作りが認められるようになった。トヨタはリストリクター違反による2年間の活動休止期間をはさんだ1998年、軽量コンパクトなカローラのボディにST205セリカの駆動系を組み込んだカローラWRCを開発。1999年にはオリオールとサインツの活躍によりメイクスタイトルを獲得。そしてこの年いっぱいでトヨタによるWRC活動は休止期に入った。

カテゴリー : WRカー 駆動方式4WD 3S-GT型ターボエンジン 使用期間 : 1998~1999年 通算4勝 主戦ドライバー : C.サインツ、D.オリオール


>>【画像32枚】カローラWRCのほか、1984年のサファリラリー優勝車両のゼッケン21のセリカツインカムターボなど。トヨタにとっては記念すべき初のサファリ制覇モデルとなった。WRC参戦といってもこの頃のトヨタは一部のラリーに限定的に出場する程度の活動だった



>> 8代目110系カローラのヨーロッパ向けボディにセリカGT-FOURの駆動系を組み込んだカローラWRC。生産車の基本構造にとらわれないですむ車両規定だけにグループAから一転「やり放題」のカテゴリーだった。




>> 基本的にはセリカと同じ3S-GT型エンジンを採用したが、エンジンベイのサイズ、クーリングシステムの違いなどから補機類や吸排気のレイアウトがかなり異なっている。エンジンベイ内のロールケージの取り回しに注目。




>> 一見してグループA時代と大きく異なる点はロールバーの組み方だ。もはやロールバーではなくロールケージという考え方で、強靱なスペースフレームの骨格にボディパネルが貼り付けられた構造となっている。



>> このアングルから眺めるとさらにロールケージの堅ろう性がうかがえる。ガスバッグも効率的な形状で作られ形状や使用素材に制限のあったグループAとは異なり、WRカーにはグループBを超す特殊性がかいま見える。



初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2015TGRFで見たWRC王者の歴史(全6記事)

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【5】から続く

text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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