TGRF2015で見た日本メーカー初WRC王者の歴史【5】ドライバー、メイクスの2冠に輝く完成形|ST185 トヨタ セリカ GT-FOUR

1993年のオーストラリアラリーを走るカンクネンのST185セリカGT-FOUR。この年カンクネンはドライバ-、トヨタはメイクスのタイトルを獲得

       
TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2015 振り返り

2015年もモータースポーツのオフシーズン突入と同時にメーカーによるファン感謝デーが開催された。注目は20年近い休止期間を経てWRC活動への復帰を表明したトヨタの動向だったが、果たして、日本メーカー初のWRCチャンピオンメーカーは、やはりTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)でファンに向けたGOサインを送っていた。

【TGRF2015で見たWRC王者の歴史 Vol.5】


参加車両編【2】から続く

 サインツが2シーズンで9勝をマーク。サインツの才能が並外れたものであったことは間違いなかったが、ST165セリカの性能がデルタと同等、あるいはそれを上回るレベルで熟成されていたことも事実で、そのST165を正常進化させたST185には不安要素がなく大きな期待が集まっていた。

 実際、TTEの活動自体も、トヨタ側の最高責任者としてTTE副社長職にあった福井敏雄が、現地とトヨタを取り持つ職務に腐心したことで、効果的にチームが機能する体制が作られていた。ちなみに、ベース車両の基本メカニズムが競技車両の性能に直結するグループA規定下にあって、トヨタとしては珍しく対策車両(セリカGT-FOURカルロスサインツ・スペシャル、日本名RC)が用意できたのは福井の強い提案によるものだった。

 相対戦力の低下したランチア勢が下降線をたどる状況も手伝って、ST185は実戦に投入された3シーズンすべてでドライバー選手権(1992年サインツ、1993年カンクネン、1994年オリオール)を獲得。念願のメイクスタイトルも1993年、1994年と2年連続で獲得。実に3シーズンで挙げた勝ち星は16勝。トヨタは名実ともに世界最高位に上り詰めていた。

カテゴリー : グループA 駆動方式4WD 3S-GT型ターボエンジン 使用期間 : 1992~1994年 通算16勝 主戦ドライバー :C.サインツ、A.シュワルツ、M.アレン、J.カンクネン、D.オリオール


>>【画像32枚】ST185セリカのほか、8代目110系カローラのヨーロッパ向けボディにセリカGT-FOURの駆動系を組み込んだカローラWRCなど。生産車の基本構造にとらわれないですむ車両規定だけにグループAから一転「やり放題」のカテゴリーだった



>> 基本的にはST165と同一のエンジン、同一レイアウトのエンジンルームだが、注意してみると水冷インタークーラーが大型化されていたりと細かな個所に進化の跡を見ることができる。完成の域にあった3S-GT型。



>> メーター類スイッチ類は必要最小限でシンプルに。4WDシステムは電子化が進み、駆動状態や制御の切り替えなど従来のラリーカーでは考えられなかった要素が膨大な量で発生。クルーは相当に大変だったはずだ。




>> ST165に比べるとガスバッグが前方に移動。駆動輪軸上に重量物を配置する理にかなった改良と見てよいだろう。フューエルラインの取り回しもより簡略化して、信頼性を引き上げているように見受けられる。



>> メカニズム面がST165からの正常進化ならば、ボディデザインもST165の延長線上にあったST185セリカ。背の高いグラベル仕様ながらサファリと違ってヘビーデューティ感はない。スポンサーカラーがマールボロからカストロールに変更された。




【6】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2015TGRFで見たWRC王者の歴史(全13記事)

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【4】から続く

text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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