TGRF2015で見た日本メーカー初WRC王者の歴史【4】WRC本格参戦の口火を切った4WDターボ|ST165 トヨタ GT-FOUR

1990年のWRC戦に臨むST165セリカGT-FOUR。この年、破竹の勢いでサインツがWRCのドライバータイトルを獲得

       
TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2015 振り返り

2015年もモータースポーツのオフシーズン突入と同時にメーカーによるファン感謝デーが開催された。注目は20年近い休止期間を経てWRC活動への復帰を表明したトヨタの動向だったが、果たして、日本メーカー初のWRCチャンピオンメーカーは、やはりTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)でファンに向けたGOサインを送っていた。

【TGRF2015で見たWRC王者の歴史 Vol.4】


【3】から続く

 1986年までTA64セリカでWRCに参戦したトヨタは1987、1988年の2シーズンを休止。WRCの車両規定がグループBからグループAに切り替わったためで、TTEは車両開発のためこの期間を準備に充てていた。

 グループA規定への移行は、あまりに高性能化し、制御のむずかしくなったグループBカーによる重大事故が多発したためで、競技車両の絶対性能を抑えつつ、より多くのメーカーに参戦の間口を広げることが目的だった。

 もっとも、ラリーカーに最も適したメカニズムが4WDターボであることは、皮肉にもグループBカーが証明したことで、量産車といえども4WDターボメカニズムが必須であることは明らかだった。グループA時代に突入すると同時に、S4のノウハウを持つランチアがデルタインテグラーレで主導権を握れたのもこのためだ。
 こうした状況を背景に、トヨタは1989年のWRCに主戦のST165セリカGT-FOURと高速ラリー用の70スープラを投入。この年1勝を挙げると早くも翌1990年にはデルタと互角の勝負をするまでに成長。参加全11戦中で4勝をマークしたカルロス・サインツ(2位4回、3位1回、4位1回)が、2番手以下を大きく引き離す圧倒的な戦績でドライバー部門のタイトルを獲得した。

カテゴリー : グループA 駆動方式4WD 3S-GT型ターボエンジン 使用期間 : 1989~1991年 通算13勝 主戦ドライバー : C.サインツ、M.エリクソン


>>【画像32枚】ST165セリカのほか、1984年のサファリラリー優勝車両のゼッケン21のTA64セリカツインカムターボなど。トヨタにとっては記念すべき初のサファリ制覇モデルとなった。WRC参戦といってもこの頃のトヨタは一部のラリーに限定的に出場する程度の活動だった



>> それまでのFRから4WDに駆動方式に変更。カテゴリーもラリースペシャルのグループBから量産車ベースの性能で戦うグループAに。指定部分を除きボディパネルの改造は一切禁止されたノーマルの外観が特徴だ。





>> エンジンはT系から最新のS系に変更。また、セリカシリーズがFFとなったことでエンジンのマウントは横置きに。3S-GT型はすでにグループCカーで十分な開発が行われていただけに性能と信頼性に優れていた。





>> メーター類やスイッチ類がアナログ主体であることはTA64の時代から変わらないが、整然と機能的にレイアウトされた点に大きな違いが見られる。すでにランチアデルタと激烈な戦いを繰り広げていた時期だ。





>> サファリ仕様のためかラゲッジルームを占領したガスバッグの大きさが印象的だ。左奥にフューエルクーラーの大きなファンが見える。ブリーザーもあるはずだからキャビン内はガソリン臭かったのではないだろうか?


 【5】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2015TGRFで見たWRC王者の歴史(全13記事)

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【3】から続く

text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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