TGRF2015で見た日本メーカー初WRC王者の歴史【3】怪物ラリープロト「グループB」時代の幕開け|TA64 トヨタ セリカ GT-TS

1982年に始まるグループ時代にトヨタはFRのセリカツインカムターボを投入。アフリカを中心に活動した

       
TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2015 振り返り

2015年もモータースポーツのオフシーズン突入と同時にメーカーによるファン感謝デーが開催された。注目は20年近い休止期間を経てWRC活動への復帰を表明したトヨタの動向だったが、果たして、日本メーカー初のWRCチャンピオンメーカーは、やはりTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)でファンに向けたGOサインを送っていた。

【TGRF2015で見たWRC王者の歴史 Vol.3】


【2】から続く

 長らくラリーカーの規定として適用されてきたグループ2/4規定が改造競争の果てに行き詰まりを見せ、代わって「ラリープロト」とも言うべきグループB規定が1982年から適用されることになった。

 TTEもこの規定変更にともないRA40セリカから新鋭TA60系セリカへの車両変更を検討。量産カタログモデルを改造しての参戦も可能だったが、競技車両としてより適性の高いモデルで臨むべきとの判断からセリカGT-T(TA63)をベースにするグループBの公認取得モデル(200台以上)GT-TS(TA64)を企画。

 搭載する4T-GT型エンジンはベースとなる3T-GT型のボアを0.5mm拡大して1791ccとした仕様だが、高過給に耐える強化ブロックを投入した点にエンジン変更の狙いはあった。また、リアサスペンションは量産型の独立懸架からラリー用として信頼性の高いリジッドリンク方式に変更。手堅い作りが特徴となる車両だった。
 主にグラベルラリー、さらに信頼性と耐久性が要求されるサバイバル性の高いイベントを選んで使われた。また、時代は急速に4WDターボへと傾いていた。

カテゴリー : グループB 駆動方式FR 4T-GT型ターボエンジン(公表出力324ps以上) 使用期間 : 1983~1986年 サファリ3勝(1984、1985、1986年)コートジボアール3勝(1983、1985、1986年)、通算6勝 主戦ドライバー : B.ウォルデガルド、J.カンクネン


>>【画像32枚】TA64セリカのほか、それまでのFRから4WDに駆動方式に変更されて登場したST165 トヨタ GT-FOURなど。カテゴリーもラリースペシャルのグループBから量産車ベースの性能で戦うグループAに。指定部分を除きボディパネルの改造は一切禁止されたノーマルの外観が特徴だ


>> エンジンは3T-GT型をベースに1791ccに引き上げた4T-GT型を搭載。さらに2090ccまで引き上げ324ps(1983年フィンランドラリーデビュー時)を発生。このエンジンは同時期にグループCカーでも使われた。





>> ラリーカーの歴史をさかのぼるとき、最も時代の変化を感じさせる部分がメーターパネルとロールバーの組み方だろう。メーター類とトグルスイッチの数がやたらに多いと感じてしまうが当時の最先端だった。





>> サファリの炎熱対策のためトランクリッドエンド上、スポイラーの中央位置に埋め込まれるようにしてレイアウトされたクーラー。ターボカーは熱をもつため、ガソリン、オイルともクーリングが不可欠となる。




>> ゼッケン21は1984年のサファリラリー優勝車両。トヨタにとっては記念すべき初のサファリ制覇モデルとなった。WRC参戦といってもこの頃のトヨタは一部のラリーに限定的に出場する程度の活動だった。


【3】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2015TGRFで見たWRC王者の歴史(全13記事)

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【2】から続く

text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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