TGRF2015で見た日本メーカー初WRC王者の歴史【2】トヨタWRCの礎、B.ウォルデガルド

2013年のTGRFでグループBセリカを操るウォルデガルド。観衆の前でのデモランは気持ちが高揚するのかターボパワーを生かす豪快なアクションを見せてくれた

       
TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2015 振り返り

2015年もモータースポーツのオフシーズン突入と同時にメーカーによるファン感謝デーが開催された。注目は20年近い休止期間を経てWRC活動への復帰を表明したトヨタの動向だったが、果たして、日本メーカー初のWRCチャンピオンメーカーは、やはりTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)でファンに向けたGOサインを送っていた。

【TGRF2015で見たWRC王者の歴史 Vol.2】

【1】から続く

 凍てつくチュリニ峠を、スパイクの火花を散らしながら豪快に駆け抜ける1台のポルシェ911S。操るのは26歳のスウェーデン人ドライバー、ビョルン・ウォルデガルド。彼自身にとって初の国際ラリー制覇、モンテカルロの勝利をたぐり寄せる走りだった。

 同郷のラリードライバー、オベ・アンダーソンに誘われ1981年TTEに加入。RA40セリカの時代でWRC戦はスポット参戦の状態だった。驚くべきは、実績が皆無のチームに、前々年の世界チャンピオンドライバーが加入したことだ。開発能力が高く、クルマを壊さぬ信頼性の高い走りは、WRC活動を立ち上げたばかりのTTEにとって大きな戦力だった。そしてアンダーソンとともに、文字どおりの二人三脚でTTEの発展に大きな貢献を果たすことになる。

 WRCでの戦績は、1973年のWRC開始年から1990年までで通算16勝、1972年以前のWRC級ラリーを含めれば20勝をマーク。1990年、46歳の時にセリカGT-FOUR(ST165)で優勝したサファリラリーは、WRC史上最年長優勝記録として現在も破られていない。


>>【画像32枚】2015年のメーカーによるファン感謝デーのようす、歴代WRC参戦車両など


 スカンジナビアン・ドライバーでヨーロッパ型のスピードラリーが得意かと思いきや「常にチャレンジングで、戦っている実感のあるサファリがいちばん好きだ」と答えてもらったことがある。

 ここでの写真は2013年TGRF時のものだが、彼にはハイパワーの後輪駆動車がよく似合う。ポルシェ911、メルセデス・ベンツSL、フォードエスコートRS、そしてセリカツインカムターボ。晩年もクラシックラリーで優勝するなど生涯ドライバーのスタイルを貫き2014年8月に病没。享年70。まだまだ惜しまれる年齢だった。



>> 2013年のTGRFでグループBセリカを操るウォルデガルド。観衆の前でのデモランは気持ちが高揚するのかターボパワーを生かす豪快なアクションを見せてくれた。



>> 年輪が刻まれた表情にかつての鋭さがよみがえる。根っからのドライバー、コクピットに収まると表情が一変した。




>> 1984年のサファリラリーより。TTEにとって念願のサファリ初制覇。最前列で喜びを表すアンダーソンの姿が印象的だ。ウォルデガルドはその後ろで、やはりうれしさを隠しきれないでいる。

【3】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 3月号 vol.34
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2015TGRFで見たWRC王者の歴史(全13記事)

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【1】から続く

text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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