かつてのストリートドラッグを再現【3】オーナー自作のスロットルシステムなど独特なパーツチョイスが見もの|1977年式 日産 フェアレディZ

「L-30」の文字が輝くヘッドカバー。その手前に位置する極太の燃料デリバリーパイプは、オーナーがワンオフで製作したもの。

       

かつてのストリートドラッグを再現|チューンドZ最前線

磨き上げられ整然と並ぶキャブレターに、ヘッドカバー上を通るプラグコードなど、L型チューンの王道スタイルを追求したS31Z。R32GT-R登場まで無敵を誇ったL型フルチューンのドラッグマシンをモチーフに、当時の貴重なパーツを惜しみなく投入。さらに進化した最新のノウハウと共に、ドラッグ仕様のZが現代によみがえる。

【1977年式 日産 フェアレディZ Vol.3】

【2】から続く

 こうして苦労の末に完成したボディに搭載するエンジンは、φ89mmのKA24型用ピストンで、340gまで軽量加工。590gまでぜい肉を削ぎ落としたL14型用コンロッドに、L28型用クランクを組み合わせ、ストローク量79mmで3Lの排気量を実現している。さらにバルブもノーマルながら軽量加工。亀有製のバルブリテーナーやスプリングに加え、カムシャフトにはTOMEI製のCカムをチョイスした。

 そしてこのエンジンを唯一無二のものとしているのが、オーナーの自作によるスロットルシステム。OERのφ50mmキャブレターとインマニこそ、ソレックスと並ぶ定番のアイテム。しかし、アクセルペダルとスロットルの接続に、ワイヤーではなく金属棒を使ったリンクシステムを製作。さらにキャブレター部も強度を高めるため、アルミ削り出しのステーを製作。インマニ加工でこのステーを装着するとともに、キャブレターまでのリンケージも径を太くすることで、強度と剛性感を高めている。

 またデストリビューターにも要注目。真っ赤なキャップのデスビは、何とトヨタのM型エンジン用。もちろんそのままでは装着することはできず、シャフトの加工が必要。また、固定進角になってしまうというデメリットは確かにあるが、それでもこのデスビを使う理由は、まず軸受けにボールベアリングが使われており抵抗が少ないというのが1つ。さらにデスビキャップの径が大きく、端子間距離が広いため、隣の端子とミススパークするといったトラブルが皆無になるという。さらにタコ足やマフラーには、L型チューン全盛期に開発された当時のままのパーツを使用。今となっては現存していることこそレアなパーツを使い、現行チューンとはひと味違うエンジンフィーリングを生み出しているのも、オーナーのZの大きなこだわりである。

>>【画像39枚】「L-30」の文字が輝くヘッドカバーなど。その手前に位置するのがオーナーがワンオフで製作した極太の燃料デリバリーパイプ

細部までメッキ&磨き加工。金属美を極限まで追求




>> メッキ職人の経歴を持つオーナーらしく、旧車のレストアに欠かせない再メッキにも、元職人ならではのこだわりが満載。右ページのキャブレターに使われるボルト類にはニッケルメッキをチョイス。ステーなどのゴールド部はクロメートメッキと種類の違う処理を使い分けることで、エンジンルームにアクセントをプラス。さらに、ガソリンタンクのベルトにもメッキ加工を施している。また、メッキ処理だけではなく、ミッションケースやエンジン前側のオイルポンプカバーなどのアルミパーツは、自身で磨き加工。普段は目に入らない部分でも、とことん美しさを追求している。







>> OERのφ50mmキャブレターに、インテークマニホールドもOER製の組み合わせ。





>> スープラやソアラに搭載されたM型エンジンのデスビを、スピンドルギアシャフトを加工して流用。ローター径が大きく、ミススパークのない安定した点火が可能。スピンドルとデスビボディの間にボールベアリングが使われ、回転抵抗が大幅に少ないというのも大きなメリット。





>> アクセルのダイレクト感を生み出しているのが、このスロットルリンケージ。どうしてもたわみでロスが出てしまうワイヤーからリンク式に変更することで、踏み込んだ時の一瞬のタイムラグを解消。



1977年式 日産 フェアレディZ(S31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FRPボンネット/フロントフェンダー、亀有製オーバーフェンダー、オールペイント、リアガーニッシュ・ボンネット同色ガンメタ塗装
■エンジン: L28型改3.0ℓ仕様、KA24型用ピストン軽量化、L14型コンロッド軽量化、L28型クランクバランス取り、TOMEI製加工Cカム80°、ノーマルバルブ軽量化、亀有製バルブスプリングリテーナー、ニスモ製クランクプーリー
■吸排気系:OERレーシングキャブレターφ50㎜×3(パイロット65/メイン240/エア200)、ファンネル35㎜、ファクター製φ43㎜6-2-1タコ足、ワンオフマフラー、RRCドラッグ用サイレンサー
■点火系: CA18型用コイル(S13)、トヨタM型用デストリビューター、永井電子機器製ウルトラプラグコード
■冷却系:ノーマルラジエーター3層増し加工、電動ファン×2
■燃料系:TOMEI製S13用インタンク式燃料ポンプ
■駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、レパード用S71Bミッション、R200デフ(ニスモ製LSD)、ファイナル3.7
■サスペンション:(F)自作車高調(TRD製AE92用ショートショック) (R)カヤバ製S30Z用ショック、タナベ製コイル(フロント8㎏/㎜、リア6㎏/㎜)
■ブレーキ:S130Z用ブースター&マスターシリンダー(180°回転) (F)R32タイプM用キャリパー、パーツアシスト製ハコスカ用ローター (R)DR30用リアキャリパー、S14用ローター、ハーストシフターズ製ラインロック
■インテリア:亀有製ダッシュカバー & 純正ダッシュボード加工、レカロ製セミバケットシート×2、サベルト製4点式ハーネス、カーボンワンオフスカッフプレート、日本精機Defi水温/油圧/油温計/タコメーター、ラインロックスイッチ、キルスイッチ、スターターボタン、燃料ポンプスイッチ
■タイヤ:ブリヂストン ポテンザRE-11A (F)195/55R15 (R)225/50R16
■ホイール:SSRメッシュ (F)15×8.5J -9 (R)16×9.5J -16
■内装:MOMO製CORSEステアリング(アルカンターラ張り替え)、レカロ製SP-Gバケットシート(アルカンターラ張り替え)、ワンオフスピードメーター、日本精機Defi油温/水温計、マッキントッシュMX5000CD/MPM4000VU



【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年8月 vol.017
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 日産 フェアレディZ(全4記事)

関連記事: チューンドZ最前線

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【1】【2】から続く

text : SHINYA KUSHIURA/串浦愼哉 photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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