函館流儀|S31Z|プロ顔負けの完全プライベート仕上げ!! 家族への思いが詰まった1台が走り出す、その助手席に|1977年式 日産 フェアレディZ Vol.3

R32GT-Rの中身をフルコンバート、全方位スキなしのモンスターZ見参

       
旧車にあこがれているものの、壊れるのが不安という意見も多い。
そんな人たちが注目しているのが、エンジンを積み替えるスワップチューンドだ。
ここで紹介するのは、北海道の函館で育まれた3台のマシン。
北の大地を存分に走り回るべく、それぞれのオーナーの思いを込めて製作された。
まずはRB26型を搭載したフェアレディZからご覧いただこう。

【1977年式 日産 フェアレディZ Vol.3】

【2】から続く

 完成したボディに、手持ちのRB26型ユニットやミッション、デフなどを組み込んだ。これら一連の作業だけでも、どれだけの苦労が伴うかは想像できるが、オーナーがすごいのは、それを受け止める土台作りまでキッチリと行なっていることである。

 なにせノーマルでも280psを発揮するRB26型ユニット。このZのようにヘッドチューンやタービン交換まですればラクに600psを超えてくる。S31のボディや足まわりでは、そのパワーを生かし切れないばかりか、危険すら伴うといっても過言ではない。

 そこでBNR32用のリアメンバーを短縮加工して、リアマルチリンクごと移植。それに合わせてドライブシャフトを切り詰めるという大手術に着手した。リアダンパーは寸法的にちょうどいいシルビア用を移植したそうだ。

 また燃料ラインやブレーキラインも引き直すなどプロも真っ青なほど作り込まれている。ワンオフのマフラーは音量が大きすぎるため、中間パイプに消音用の電子バルブを組み込んだ。
 ところで、ボディカラーをR34GT-R VスペックⅡ純正のミレニアムジェイドにしたのは、愛妻の意見が大きいとか。若い頃に一緒にドライブしたケンメリを彷彿させる色合いというのがその理由。ちなみにショートノーズではなくGノーズにしたのは娘さんの好みを反映させたのだ。


>>【画像37枚】まるで純正であるかのように、違和感なくR32GT-R用の主要部品が収まっているのがわかるアンダーフロアなど

 そんなエピソードからも、オーナーがいかに家族を大切にしているかが理解できる。ひとり娘の新たな船出を祝うためこのZを完成させたかったのも、そうした強い思いがあったから。

 娘の旅立ちは、父親にとっても人生における大きな転換期となる。だからこそ自身もこれまでたどってきた軌跡を振り返り、新たな道を歩むために、オンボロのZを引き取り、レストア作業に没頭したのだと想像できる。


 その強い思いが実り、2017年の春にZの再生作業が完了。助手席にひとり娘を乗せて自宅の周りをぐるりと1周した。「あのクルマがよく動いたね」といたく感心していたそうだ。
 やがて彼女は故郷を離れ、それと同時にオーナーとZの新たな生活が始まった。レストア&エンジンスワップという大仕事を通じて気持ちの整理がついたであろうオーナーは、娘さんを笑顔で見送り、そして力強い一歩を踏み出した。あざやかにバーンナウトを決めた、このフェアレディZのように。



大容量サージタンクはトラスト製でこちらもピカピカに磨き上げる。HKSのデリバリーを追加し、インジェクター容量も拡大。





エンジンルーム内にギリギリで収まったタービンはトラスト最大級となるT88-34D。パワーは未計測だが、600psオーバーは確実だ。


OWNER’S VOICE



「何でも自分でやりたい性分なので完全DIYで仕上げました。塗装中にシンナー中毒になりかけたことも……。そんなかいもあり、娘が東京に行く前に完成しました。このZに乗っていると時間を巻き戻すような感覚になれます。嫁を連れて洞爺湖までドライブに行きました。車内が狭いとかうるさいとかいいながら、付き合ってくれましたよ」


1977年式 日産 フェアレディZ(S31)
SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:リスタード製カーボンGノーズ/前後カーボンバンパー/前後カーボンオーバーフェンダー/FRPボンネット/FRPドア/FRPハッチバック、全塗装(ミレニアムジェイド)、ボディフルレストア、フルスポット増し 
■エンジン:RB26DETT型換装、トラスト製T88-34Dタービン、HKS製ハイカム(IN&EX:272度 9.1mmリフト)/強化バルブスプリング/F-con V Pro 
■点火系:HKS製ツインパワー
■燃料系:HKS製フューエルデリバリー/大容量インジェクター、燃圧レギュレーター、ボッシュ製燃料ポンプ、ワンオフ40L燃料タンク 
■吸排気系:日産純正6連スロットル、トラスト製サージタンク/マフラー改(メインφ90mm電子バルブ付き) 
■冷却系:ARC製インタークーラー/アルミラジエーター、HKS製オイルクーラー、MOCAL燃料クーラー 
■駆動系:BNR32用純正ミッション移植、OS技研製クロスミッション、HKS製ツインプレートクラッチ、GT-R純正デフキャリア、GT-R純正ドライブシャフト加工、ファイナル4.1 
■足回り:BNR32用マルチリンク式リアサスペンション&リアメンバー移植、HKS製車高調(F&R 10kg/mm)、シルビア用リアダンパー流用 
■ブレーキ:(F)R32タイプM用キャリパー、N1ローター、ブレーキライン引き直し 
■インテリア:オートメーター製1万1000rpmスケールタコメーター、日本精機Defi製ブースト計/油圧計、PLX空燃費計、ブリッド製バケットシート×2、タカタ製4点式ハーネス、ナルディ製ステアリング、ニスモ製シフトノブ、HKS製EVC、ロールバー溶接留め 
■タイヤ:(F)ダンロップ ディレッツァDZ101 215/45R16 (R)ブリヂストン ポテンザRE-11 225/45R16 
■ホイール:ワーク マイスターCR-01 (F)16×8.5J -9 (R)16×9.5J-22

初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 日産 フェアレディZ(全3記事)

関連記事: 函館流儀 旧車リメイク

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【1】【2】から続く

photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ) text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔

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