L型より軽いLS1! マウントキットを使っても一筋縄ではいかなかったエンジン換装 〜2017〜|1973年式 ダットサン 240Z

狭いエンジンルームへいかに積み込むか? そこにプロならではの策と技術が凝縮される。

       
S30ZにアメリカンV8エンジンをスワップする例は数多く存在するが、そのほとんどは、昔からあるシボレー・スモールブロックエンジンだ。だが、そんなありきたりの風潮に風穴を開けるべく、1人のオーナーと1人のビルダーが大いなる一歩を踏み出した。選ばれたのは、1998年式のGM製インジェクションエンジン「LS1」。今の時代にフィットしたV8は、いかにしてS30Zに移植されたのか?

【1973年式 ダットサン 240Z Vol.3】

【2】から続く

 LS1型について冨樫さんは、「シボレーV8のエンジンスワップは、今のアメリカではLS1型が主流です。材質がアルミメインのため、L型エンジンより2気筒多いのに重量はほとんど変わりません」と、ベストな選択の1つであることをアピールする。

 そのスワップだが、先にも述べたように簡単なものではなかったようだ。まず、市販のエンジンマウントキットを使ってみたものの、そのとおりに組むと、ミッション→プロペラシャフト→デフのピニオンアングルが基準値外となり、高回転時に振動が発生する恐れがある。そこで、基準値内に収めるべく、エンジンマウントとミッションマウントをワンオフで製作し、基準値内に収まるように位置を調整。これにより高速走行時の振動がなくなり、スムーズな動力伝達が可能になった。


>>【画像23枚】ピニオンアングルの適正化を行うべく、ワンオフで製作されたエンジンマウントなど




一見、何の変哲もないプレーンなコイルカバーだが、実はエーデルブロックの文字などを消して仕上げた手間のかかった逸品なのだ。また、LS系エンジンのロッカーアームは不具合が生じやすいことから、ベアリングのみフルローラーに、アクセサリーパーツの多さからヘッドをコルベット用に交換し、対策している。





エンジンマウントのキットに含まれていたヘダース(タコ足)は、そのまま使用。ところが、これもエンジンルームの狭さが災いして、組み付けるのに四苦八苦した模様。





C3コルベット用アルミラジエーター、ブラックマジックの電動ファン、アルミリザーバータンクのチームが、LS1型の冷却を担当。

LS1型エンジンとは? 

 

1997年以降のシボレー・コルベットや1998年以降のシボレー・カマロなどに搭載されたシボレー初のオールアルミエンジンの愛称。1998年にはアメリカのエンジンベスト10にも選ばれたほどの傑作だ。日本仕様の98カマロのスペックは5665cc、288ps/5200rpm、44.6kg-m/4000rpmで、Z28というグレードに積まれていた。



1973年式 ダットサン 240Z
SPECIFICATIONS 諸元
■ボディ:ブルーオールペイント、フロントスポイラー、前後バンパー&フェンダーミラーブラックアウト、ピンストライプ入りリアクオーターウインドー
■エンジン:1998年式シボレー・カマロ用LS1型エンジン、2000年式シボレー・コルベット用ヘッド、エキゾーストポート拡大&研磨、ワンオフコールドエアインテーク、エーデルブロック製キャストアルミコイルカバー文字&ライン消し、ワンオフエンジンマウント、ヴィンテージエア・フロントランナーベルトドライブシステム
■吸排気系:CXレーシング・ヘダース、ワンオフマフラー、マグナフロー・サイレンサー
■冷却系:C3シボレー・コルベット用アルミラジエーター、ブラックマジック・電動ファン、ビレットリザーバータンク、ハイドロブースター&パワステ用オイルクーラー
■燃料系:MSD・インラインポンプ、3/8吸い出し用ライン新設、5/16純正吸い出し用ラインをリターンに加工、ガソリンタンク内バッフルプレート新設
■駆動系:GM・T5ミッション(ブッシュでクランクシャフト側延長加工)、アメリカンパワートレーンマニュアルトランスミッションベルハウジング/RAM HDハイドロリックレリーズ(クラッチフルードホース取り付け部バンジョーフィッティング加工)、プロペラシャフトヨーク部加工、ワンオフミッションマウント
■操舵系:フォード・サンダーバード1982〜1988年式用ラック&ピニオン移植(取り付けメンバー部分新設)
■ブレーキ:ウィルウッド・マスターシリンダー、ユニバーサルハイドロリックブースター、トヨタ・4ポットキャリパー
■インテリア:インフィニティ用レザー巻きダットサンコンペステアリング、240Zシフトノブ、レカロバケットシート、ダイナマット敷きフロア、ヴィンテージエア・GⅡCOMPAC
■タイヤ:ブリヂストン・ポテンザRE760 225/50R16
■ホイール:XXR・002.5 16×8.0

【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2017年11月号 vol.014(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 ダットサン 240Z(全4記事)

関連記事:エンジンスワップの挑戦者たち

関連記事: フェアレディZ

【1】【2】から続く

text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO/佐藤亮太

RECOMMENDED

RELATED

RANKING