3つの仕様が存在!? 量産で初のロータリーエンジン搭載車|1972年式 マツダ コスモスポーツ Vol.1

量産で初のロータリーエンジン搭載車、マツダ コスモスポーツ。

       
【1972年式 マツダ コスモスポーツ Vol.1】

 東洋工業(現・マツダ)がロータリーエンジンに興味を持ったきっかけ、それは1960年1月に松田恒次社長に届いた一通の手紙に始まる。差出人は、恒次社長の親友である西ドイツのW・R・フォルスターさんだ。彼はNSU社が行ったロータリーエンジンの公開運転のことを詳しく書き綴り、技術提携することを勧めた。

 当時、東洋工業は三輪車メーカーで、軽乗用車も発売していない。自動車メーカーとしての地歩を固め、飛躍を目指す恒次社長は、この未知のエンジンの将来性に注目し、10月初旬にNSU社を訪ねている。社長自らハイデカンプ社長と直接の交渉を行い、10月12日にバンケルREに関する技術提携交渉の仮契約にこぎつけた。そして翌年3月27日に正式な契約を交わし、本格的な研究と開発に乗り出している。が、作業を進めてみると、すぐに難題が山積していることを思い知らされた。その最大のものが、ローターハウジング内壁を傷つけるチャターマーク(波状摩耗)だ。エンジニアの多くは、NSU社にだまされた、と思い、開発は挫折しかかった。だが、恒次社長は資本自由化や業界再編成の荒波を乗り切るためには絶対に必要と考え、先頭に立って旗をふり続けたのである。

▶▶▶【画像20枚】高速走行時の浮き上がり防止用のフィンが付くワイパーなど


コスモスポーツは、プロトタイプ(市販されず)、前期型、後期型の3つの仕様が存在し、それぞれ装着パーツやボディのディテールなどが細かく異なっている。市販車として、ロータリーエンジンを初めて搭載。時代の最先端を行く画期的なクルマだったが、総生産台数は1176台というデータがあり、そのうち写真の後期型が800台程度となっている。


 

1972年式 マツダ コスモスポーツ(L10B)
Specification 諸元
全長 4130mm
全幅 1590mm
全高 1165mm
ホイールベース 2350mm
トレッド前 / 後 1260 / 1250mm
最低地上高 125mm
車両重量 960kg
乗車定員 2名
最高速 度 200km / h
登坂能力(tanθ) 0.553
最小回転半径 5.2m
エンジン型式 10A型
エンジン種類水冷 2ローター・ロータリー
総排気量 491cc×2
圧縮比 9.4:1
最高出力 128ps / 7000rpm
最大トルク 14.2kg-m / 5000rpm
変速機 前進5段 / 後退 1段 前進フルシンクロメッシュ
変速比 1速 3.379 / 2速 2.077 / 3速 1.390 / 4速 1.000 / 5速 0.841 / 後退 3.389
最終減速比 4.111
燃料タンク容量 57L
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション 前 / 後独立懸架筒型複動オイルダンパー・コイルバネ / 筒型複動オイルダンパー半楕円形板バネ
ブレーキ前 / 後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 155HR15ラジアル
発売当時価格 158万円

【2】【3】に続く

初出:Nostalgic Hero 2016年 4月号 vol.174(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 マツダ コスモスポーツ(全3記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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