サファリを最も好んだワルデガルド。初代セリカGT‐FOUR(ST165)の1990年サファリラリー優勝車|トヨタ セリカ GT-FOUR Gr.A for WRC Vol.4

高い車高、大きなマッドフラップ。どこから見てもグラベル仕様であることは一目りょう然なのだが、なぜかこのセリカはこの装いがよく似合う。ケルンナンバーがTTEの車両であることを示している。

       
1960年代前半からサファリに本格参戦を始めた日産に比べ、トヨタによる体系立ったラリー活動はほとんど見られなかった。しかし、70年代中盤にTTE(トヨタチームヨーロッパ)が設立されてオベ・アンダーソンが代表に就くと、トヨタのラリー活動は一気に本格化。日本メーカー初のWRCレギュラー参戦を果たし、王座に君臨するラリーの名門ランチアと死闘を演じた末にタイトルを獲得。立役者となったのはターボ4WDのグループA、セリカGT-FOURだった。

【トヨタ セリカ GT-FOUR Gr.A for WRC Vol.4】【3】から続く

 こうした過程で作られた車両が、この初代セリカGT‐FOUR(ST165)の1990年サファリラリー優勝車で、クルーはB・ワルデガルド/F・ギャラハーのベテランコンビ。TTE創設者のアンダーソンの友人であり、TTE発展の原動力ともなったワルデガルドは、数あるラリー中でもサファリを最も好んだドライバーだ。

 グラベルラリーの中でもタフなことで知られるサファリラリーは、高い車高、多くの補助灯、左右Aピラーの根元のウイングライト、ガードバーの装着などで、他のラリーとは異なる外観上の大きな特徴を備えている。

 ところでサファリといえば、日本メーカーの中では通算7勝を挙げている日産が圧倒的に強いような印象も受けるが、実はトヨタは8勝をマーク。日産より多い勝ち星を残している。


【画像11枚】アベレージスピードの高いサファリで必要不可欠な強力な補助灯など


 ちなみに、1953年に始まるサファリラリーは、その長い歴史の中で単独イベントであったりWRCであったりARC(アフリカラリー選手権)であったりするのだが、ここでの最多勝は通算13勝(14年現在)を記録した三菱が持っている。これにスバルが記録した4勝を加えると、日本メーカーだけでなんと32勝もマークしたことになる。

 しかし、なんといってもトヨタの功績は、まだどの日本メーカーもなし得なかったWRCのドライバーとメイクスの両タイトルを、初めて獲得したことに尽きるだろう。



90年代初頭はアナログ時代の最終期。メーターフェシアには丸形アナログメーターがずらりと並ぶ。シフトもまだHパターンの時代。ミッションはXトラック製の6速を使用。タコメーターのレッドゾーンが9000rpmからというのが興味深い。最高出力は6000rpm。リストリクター対策のエンジン作りがうかがえる。
 


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トヨタがWRCで勝てるようになったのはTA64の時代(1980年代中盤)。そしてWRCへのレギュラー参戦を開始してシリーズタイトルを争うようになったのは、このST165の時代から。今回紹介する車両は1990年のサファリラリー優勝車、B・ワルデガルド/F・ギャラハー組のセリカGT-FOURだ。


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 08月号 vol.170(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

トヨタ セリカ GT-FOUR Gr.A for WRC(全4記事)

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text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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