日本独自の解釈として、高性能を示すためのグレードとなっていったGT|忘れ得ぬニッポンのGT Vol.2

忘れ得ぬGT(スカイライン-2000GT-E・S、カローラGT、ベレット1800GT、サバンナGT、フロンテ71 GT-W)たち。

       
欧州の高性能車がGTの車名を持ち、格上グレードのイメージを醸成。
その流れを意識して、国産車にもGTを名乗るクルマが現れた。
しかしGTグレードは日本独自の解釈のもと、広まっていくことになる。

【忘れ得ぬニッポンのGT Vol.2】【1】から続く

 GTの称号が与えられるのは、そのメーカーの高性能モデルやフラッグシップだ。が、日本ではコンパクトカーや軽自動車も「GT」のグレードバッジを付けるようになった。クルマだけでなくタイヤにもGTの文字を使うなど、大はやりとなっている。

 高い技術レベルを誇り、日本グランプリにも積極的に挑んでいたダイハツは、65年10月に主力ファミリーカーのコンパーノに「GT」を設定した。トヨタもGTの設定に意欲を見せている。第1弾は67年5月に正式発売されたトヨタ2000GTだ。2シーターと割り切り、流麗なクーペデザインを採用したため「グラン・ツーリスモ」と呼ぶにふさわしい。

 これに対しコロナの2ドアハードトップをベースに開発されたトヨタ1600GTは、通好みのスポーツクーペとして知られ、レースでも速い走りを見せつけた。これ以降、トヨタはDOHCエンジン搭載車だけにGTバッジを付け、高性能を誇示している。

 70年代になると「GT」を名乗るスポーティーカーが一気に増え、ついには軽自動車にもGTが誕生した。マスタングに触発されてスペシャルティーカーというジャンルが確立されたのも70年代だ。そのリーダーモデルはGTバッジを付けている。1970年、トヨタはセリカを投入したが、イメージリーダーとして送り込んだのが2T‐G型直列4気筒DOHCエンジン搭載の1600GTだ。その後、兄弟車のカリーナにも1600GTを設定し、1973年には2Lの2000GTも登場した。

 トヨタは70年代後半になると、電子制御燃料噴射装置のEFIで排ガス規制を乗り切った2T‐GEU型DOHCエンジンをカローラレビンとスプリンタートレノに搭載している。この時期、同族の2ドアハードトップと4ドアセダンにも2T‐GEU型エンジンを搭載した。これが1600GTだ。

 三菱もコルト・ギャランの頂点に立つファストバッククーペに、GTOのネーミングを付けている。また、セレステにもムード派のGTを設定した。

 マツダも1972年秋に魅力的なGTを投入する。ロータリーエンジン専用車として開発し、送り出したサバンナに輸出仕様と同じ12A型2ローター・ロータリーエンジンを積んだサバンナGTだ。排ガス対策を施したことによりスポーツモデルは軒並みパワーダウンを余儀なくされ、姿を消したGTも少なくない。だが、サバンナAP GTは厳しい排ガス規制をパスしながら、痛快な走りを見せつけた。この走りのDNAは、次の世代のサバンナRX‐7 GTにも受け継がれている。

 また、70年代になると軽自動車にもGTを名乗るクルマが出現し、人気者となった。この少し前、ホンダN360がパワー競争の引き金を引き、各メーカーからツインキャブ装着のSやSSが登場している。リッター当たり100馬力レベルの高性能ミニだった。が、このグレード名では高性能であることを伝えにくいと思ったのか、ホンダZやミニカ・スキッパー、フロンテはGTの名を好んで使っている。

 軽自動車までがGTを名乗ったことにより、ありがたみが薄れた、と感じたカーマニアも多かったようだ。が、高性能をアピールしやすいグレード名であるため、80年代も「GT」は増え続けた。トヨタは新世代DOHCエンジンを積む「GT」を積極的に送り込んだし、他メーカーはターボ搭載の4WDモデルなどにGTを用いている。そのいい例がスバルだ。ツーリングワゴンのトップグレードにGTを冠したが、誰も異論を唱えなかった。

【画像6枚】1970年末にデビューしたギャランGTO(グラン・ツーリスモ・オモロガート)など



1964年5月に発売されたスカイラインGTが伝説のスタート。65年2月には仕様変更でスカイライン2000 GTとなり、同年9月には1キャブを2000 GT-A、3キャブを2000 GT-Bに改称した。赤バッジ、青バッジの違いに、皆が心躍らせた。





初代ホンダZ HTにもGTは存在。しかし最上級にGSSがあり、GTは中間グレードの名称にとどまり、特別感のまったくない使われ方だった。ホンダらしいと言えばそうかもしれないが……。



初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 12月号 vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

忘れ得ぬニッポンのGT(全2記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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