グラン・ツーリスモを世間に広めたのはイタリア。ロングドライブに適した高性能車GTたち|忘れ得ぬニッポンのGT Vol.1

忘れ得ぬGT(スカイライン-2000GT-E・S、カローラGT、ベレット1800GT、サバンナGT、フロンテ71 GT-W)たち。

       
欧州の高性能車がGTの車名を持ち、格上グレードのイメージを醸成。
その流れを意識して、国産車にもGTを名乗るクルマが現れた。
しかしGTグレードは日本独自の解釈のもと、広まっていくことになる。

【忘れ得ぬニッポンのGT Vol.1】

 昔も今も高性能モデルには「GT」のグレードバッジが付けられている。言うまでもなくGTは、英語で「GRAND TOURING(グランド・ツーリング)」を略したものだ。イタリア語では「グラン・ツーリスモ」と呼ばれている。その語源は「大いなる旅行」で、悠々と旅することを意味していた。自動車の世界では、高速走行を中心としたロングドライブに適した高性能モデルを指している。

 1600kmを一気に走破する、ミッレミリアを引き合いに出せば分かってもらえるだろう。早く目的地に着けるように高性能エンジンを積み、サスペンションやタイヤをグレードアップしてハンドリングを高いレベルへと引き上げた。これがGTだ。

【画像6枚】初代ホンダZでは最上級にGSSがあり、中間グレードの名称としてGTを使ったホンダなど

 グラン・ツーリスモを世間に広めたのはイタリアである。アルファロメオは戦前から「グラン・ツーリスモ」の名を冠した高性能車を生み出していた。戦後になるとランチアがアウレリアGTを、フェラーリも250GTなどを発売している。1960年代の高性能車の代名詞が「GT」だ。

 GTを名乗るクルマは、2シーターや2+2の2ドアクーペが多かった。日本で最初に「GT」バッジを付け、発売されたのも2ドアクーペである。今ではトラックとバスの専門メーカーになったいすゞ自動車は、1964年4月、ファミリーカーのベレットにスタイリッシュな2ドアクーペ、ベレット1600GTを設定し、話題をさらった。

 が、ベレットGTにはもうひとつのエピソードがある。正式発売の半年前の63年10月、いすゞは第10回全日本自動車ショーに、ベレット1500GTを出品していたのだ。これを発展進化させ、カタログモデルとしたのが1600GTである。ちなみに1600GTの発売から5カ月後、この1500GTも市販に移された。

 ベレットGTと同じ1964年、プリンス自動車も「GT」を開発して発売している。スカイライン1500の鼻先を延ばし、G7型直列6気筒SOHCエンジンを押し込んだスカイラインGTだ。5月に開催される第2回日本グランプリに出場させるために100台を生産し、限定販売の形で送り出した。ベレットGTと違い、こちらは4ドアセダンをベースにしている。マスコミ発表は3月だったが、正式発売はグランプリ直前の5月1日だ。

 スカイラインGTはフォードの主力セダン、コルティナに加えられたGTにヒントを得て、開発に着手したのだろう。1.2Lに代えて1.5Lエンジンを積んだコルティナGTと1963年9月に登場したDOHCのロータス・コルティナに刺激を受け、排気量を拡大して高性能化したエンジンを積んだように思う。グランプリで高性能をアピールし、1965年には正式なカタログモデルに昇格した。これがスカイライン2000GTで、後にGT‐Bとなる。

 ベレットもスカイラインも、1969年により高性能なDOHCエンジンを積むGTの最高峰、「R」を送り込んだ。スカイラインは6気筒エンジンを積んだクルマだけがGTを名乗っていた。が、登場から50年を経た2014年、ついにその呪縛を解き放っている。

 また、日産はヒット作となったスカイライン2000GTと張り合うように、4代目のブルーバードUにもロングノーズ、ロングホイールベース、直列6気筒エンジンのブルーバードU2000GTを設定した。



ギャランGTO(グラン・ツーリスモ・オモロガート)は1.6Lエンジン搭載で1970年末にデビュー。1972年3月には、1.7Lエンジンに排気量アップした17Xシリーズ(写真)が登場した。しかし10カ月という短命に終わる。


【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 12月号 vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

忘れ得ぬニッポンのGT(全2記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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