「ホイール、どうしますか?」という1本の電話。なぜサスペンションを作らなければならないのか|1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.2

ボディカラーは、はやり廃りに流されず、補修のしやすさも考慮してヴィッツ純正の紺色とした。メーカー装着よりもピッタリと収まるサイドモールのストレート具合も驚嘆の仕上がりだ。

       
【1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.2】

【1】から続く
 
 クラウンピックアップの「クラウンV8載せ換え計画」。クラウンピックアップがオーナーの元を離れ、実際のプロジェクトがスタートするまでに5年もの時間を要した。

 そして「ホイール、どうしますか?」という1本の電話が、製作を担当するアート・オブ・ワークの鈴木英彦代表からかかってきた。

 サスペンションを作るにあたり、実際に走るときの車高の位置を決めたい。だから、タイヤ&ホイールのサイズを決めてほしい。

 ここで、なぜサスペンションを作らなければならないのかについても触れておこう。オーナーからのリクエストの1つであるエアサスのバッグを収めるためのスペース確保とかルックスの向上という理由もあるが、実際に走るときの車高に合わせてアームの位置を決めていかないと、自動車としてのサス本来の動きができないからというのが最大の理由だ。後先を考えず、強引に車高を落とすだけならカンタンなのかもしれないが、車高を落としても快適に走れることにまで思いを巡らせれば、アッパーとロワアームのあるべき位置は自然に決まってくるのだ。

 この位置決めは、ユーノスロードスター用を流用したラック&ピニオンのステアリングにもいえ、アーム位置を踏まえた特定の場所に設置しなければ、パーツとしての正しい機能が果たせないのである。こうした自動車工学の基礎を踏まえた製作法は、片手で高速ドライブができるほどの安定性確保へと結実していく。

 ブレーキには、シボレーカマロのパーツを使用。これも「もしドライブ中にトラブルが起こったとしても、シボレーのパーツであれば、近くのヤナセで対応できる」という、メンテナンスの簡便さから逆算しての選択だ。そしてアームは、美しさ、素材が持つ粘り感、サビなどを考慮して、ステンレスにてワンオフ製作。このパートだけを見ても、理にかなった「カスタム」であることの定義を見事に満たしているのである。

 
コレしか考えていなかった」とオーナーが話すホイール。フェンダーの内側にキレイに収めるのがアメリカンの流儀。タイヤサイズはファットな295/50R15。リーフリジッドから4リンク式に改められたリアサスなど【写真21枚】



ワンオフ製作されたアーム類、ユーノスのラック&ピニオン、エアバッグで見応えのあるフロント足回り。ブレーキは部品調達の便利さを考えて、ヤナセでも扱っていたカマロのキャリパーを使っていた。




リアサスは4リンク式に改められ、7インチナローされたGMのリアエンドと組み合わせる。同時にフレームのナローやレイズド手術も受けている。





太めのリアタイヤに合わせ、ベッド内のタイヤハウスは片側10cmほどワイド化され、ロワードによって行き場を失ったマフラー、デフ、エアバッグのマウントなどもベッド内部に顔を出す。そして、この手前で整えられたフロアリブの美しさも見せ場の1つとなる。



【3】【4】に続く


1970年式トヨペット クラウン ピックアップ
SPECIFICATIONS 諸元
● エクステリア:ヴィッツ純正ネイビーメタリックオールペン、
スーパーデラックス用フロントドア移植、
サイドモール裏発泡ウレタン充填、
テールゲートアンダープレスライン新設、
Rバンパーナンバーポケット加工/ステーボルトスムージング、
ムーンアイズ赤テールレンズ、
開閉式ベッドサイドフィラーパネル
(エアサス&バッテリーキルスイッチ入り)、
ベッド内タイヤハウス片側10cmワイド化、ベッドフロアリブ整形
● エンジン:シボレー350
スモールブロック改360(各部スムージング済み)、
カムシャフト交換、カルカスタムアルミバルブカバー、
ホーリー600cfmキャブレター、ワンオフクロームブラケット、
ファイヤーウォール/インナーフェンダースムージング、
ヴィンテージエア・エアコンキット、
エアコンコンプレッサーワンオフ加工
● 点火系:GMハイエナジーイグニッション
● 吸排気系: ワンオフアルミエアクリーナーカバー、
ウェイアンドインテークマニホールド、
ワンオフステンレスヘダース/マフラー
● 冷却系: 汎用アルミラジエーター+電動ファン
● 駆動系:シボレーTH700R4ミッション、3rdカマロ用プロペラシャフト、
GM10ボルトリアエンド
(ワンオフ鍛造シャフト入り7インチナロード加工済み)、
モーザースタビライジングハウジングカバー
● サスペンション: (F)ワンオフフレーム/
ワンオフステンレスチューブラーアーム、
マスタングⅡ2インチドロップスピンドル、ファイアストンエアバッグ、
ユーノスロードスター用ラック&ピニオン加工設置(クーラー付き)、
(R)ワンオフパラレル4リンク+ダイアゴナルアーム、
リアフレーム2インチナロード&レイズド
● ブレーキ:(F)シボレーカマロ用メトリックキャリパー/
フォードグラナダ11インチローター、
(R)ECIリアディスクブレーキキット、マスターバック車内移設
● インテリア:クローム+シルバーペイントメーターパネル、
オートメータータコメーター、
ローカーシフトゲージ、バドニックビレットステアリング、
アームレスト組み込み本革張り替えベンチシート、
130系ハイラックスサーフ用ドアアームレスト移植、ETC、
オーディオヘッドユニット&ウオッシャータンク入りグローブボックス
● タイヤ: ファイアストン (F)195/55R15 (R) 295/50R15
● ホイール:ハリブランドスプリント (F)15×7.0 (R)15×10.0

初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式トヨペット クラウン ピックアップ (全4記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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