秘蔵写真とともに公開!「LY28型改3.1Lツインターボ」製作記|1977年式 日産 フェアレディ Z-T Vol.5

LY28型は3.1Lへスープアップし、TD06ツインターボで怒濤のパワーを発揮。

       
【1977年式 日産 フェアレディ Z-T Vol.5】

【4】から続く

エスコートの手によって組み上げられたLY型3.1Lツインターボエンジンは、見えている部分のみならず、内部の作り込み具合もハンパない。そこで、組み上がった今となっては見ることができない内部のパーツなどを、オーナーからお借りした秘蔵写真とともに紹介しよう。



ドラッグレースで蓄えLYターボ用に仕上げたピストンや、クロスレイアウトのタービンへのパイピングなど【写真45枚】


エスコートがドラッグレースで蓄えた豊富なノウハウを注ぎ込んだ鍛造ピストンのブランクを、ターニングセンターで加工し、LYターボ用にボックス構造で仕上げている。ストローク83mmのクランク使用と3.1L化が前提だったため、ボアはφ89mmに決定した。




クランクは、オーナーがエスコートに依頼する以前から使っているもので、まつおかがクロワーに特注で作らせたという83mmストロークのフルカウンタークランクだ。




コンロッドはERPのピストンに合わせて、カーニングハムに特注したL20型芯間のクロモリ鍛造I断面レース用コンロッドだ。




エンジンの特性を決めるカムシャフトは、LY型の特性に合わせてワンオフされたスペシャル品。作用角は76度、バルブリフトは14mmに設定されているが、カムプロフィールは秘密だそうだ。合わせて、カムスプロケット、カムチェーン、チェーンガイドも製作。バルブは、IN側は耐熱銅、EX側はインコネルで製作。ロッカーシャフトも新たに図面を引いて製作した。




オーストラリア製のφ100mmビッグスロットルと大容量サージタンク。芸術的な板金溶接加工で製作されていて、アルミ鋳物製に比べるとかなり軽量。




LY型ツインターボの最大の難関がインマニの製作。大容量のサージタンクを装着するため、LY型ヘッドとRB型インマニを合体させる独創的なアダプターを製作。3次元にポートをひねる斬新なアイデアだ。



インタークーラー、オイルクーラー、ラジエーターの3つがフロントで重なり合ってしまうため、冷却の効率化は今後の課題の1つとなっている。



ゴールドのアルマイト仕上げが美しいオイルパンも、ウエットサンプ方式に変更するにあたってエスコートでワンオフ製作したもの。バッフルプレートがオイルの偏りを防ぎ、ここに大容量に対応するべく延長加工されたオイルストレーナーが組み込まれる。通常のL型とは逆の傾きになるため、マウントもRB型用を使って対応している。



フロント側の3気筒をキャビン側のタービンに、キャビン側の3気筒をフロント側のタービンに回す、独自のレイアウトとなるツインターボ。タービンには昔から使われていて、レーシングノウハウの詰まったトラスト製TD06 20Gを装着。エキマニはφ45mmのステンレス製等長で、芸術的な取り回しやフィニッシュの美しさは別格!  車載状態で見えないのが残念。







CHRONOLOGICAL TABLE


1983年/免許を取って最初に買ったのが75年式S30Z-L 2シーター(キャブ仕様最終)。その後、いままでにS30系を6台、S130を3台乗り継ぐ。


1997年/現在の77年式C-S31J フェアレディZ-Tを購入。リモコンミラーからインダッシュエアコン、8トラデッキまでフルノーマル状態だった。


1999年/240ZG仕様に変更し、L28型改3LのTD06-19Cシングルターボ仕様を搭載する。


2000年/クロスフローのLY型ヘッドを入手、ここから泥沼にハマる。


2002年/LY28型の製作開始。最初にカムチェーンとスプロケを製作。


2004年/FJ20型用ピストン改、L20型用コンロッド、LD28型用クランクでLY28型改3.1Lツインターボ仕様が完成。


2005年/再度製作開始。


2006年/エスコートに製作を依頼。


2007年/LY28型改3.1Lツインターボ仕様完成。11月開催のアルティメイトZカークラブ主催の栃木テストコースのミーティングに持ち込む。


2008年/ノスタルジックカーショウ(東京ビッグサイト)に出展。Z Car Fiesta(アルティメイトZカークラブ主催)で1位受賞。


2009年/トラスト製6速ドグミッションに換装。フロントブレーキをブレンボ製F50用に変更。


2010年/トラスト製6速ドグミッションのギアをサーキットで2回飛ばす。


2011年/リアブレーキをブレンボ製ボクスター用に変更。リアメンバー製作、リアパイプアーム化。
2012年/HKS製シーケンシャル6速に換装。リアハブ変更(エスコート製作)。


ドラッグレースで蓄えLYターボ用に仕上げたピストンなど【写真45枚】


1977年式 日産 フェアレディ Z-T(C-S31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FD3S用レッドオールペン、240ZGノーズ&ヘッドライトカバー、ウエストヨコハマ製フロントスポイラー、130Z用ボンネットダクト、ナポレオンバッカミラー、ワンオフインスペクションリッド、ウエストヨコハマ製3ナンバー用オーバーフェンダー、前期型テール、純正形状社外リアスポイラー、ワンオフリアエンブレム
■エンジン:LY28型専用マグネシウムヘッドカバー(カムラインボーリング、結晶塗装加工)、LY28型ヘッド下面修正フライス加工、トラスト製特注メタルヘッドガスケット、N42後期新品ブロック(レース用メタル特注、クランクキャップボルト穴M12に拡大、クランクラインボーリング、LY型用水穴加工)、ERP製鍛造φ89mmブランクピストン改、ピストンピン穴テーパー加工、カーニングハム製特注鍛造I断面コンロッド(L20型芯間)、クロワー製特注83mmフルカウンタークランク、スペシャルカムシャフト、ワンオフカムスプロケット、クランクスプロケット(キー部分ワイヤーカット放電加工)、ワンオフカムチェーン、ワンオフチェーンガイド、インテークバルブ耐熱鋼ワンオフ製作、エキゾーストバルブインコネルワンオフ製作、バルブガイド打ち替え、シートリング入れ替え、ワンオフロッカーシャフト(リューブライト加工)、ロッカーアームブッシュ打ち替え(リーマー仕上げ)、ワンオフアルミオイルパン(アルマイト仕上げ)、ワンオフオイルストレーナー、オイルストレーナーブラケットワンオフ(クロメートメッキ仕上げ)、ワンオフバキュームタンク、ニスモ製プーリーキット改オルタネーターブラケット、マグナフューエル製フューエルポンプ、RB型用440ccインジェクター、クスコ製タワーバー
■点火系:RB26DETT型用イグニッションコイル、イグナイター、クランク角センサー、モーテックM4シリーズ
■吸排気系:K&N製エアクリーナー、ハイパーチューンアルミサージタンク、φ100mmスロットル(出口角度加工)、LY型→RB型ワンオフ変換インテークマニホールドスペーサー、RB型用インテークマニホールド、三菱エキゾーストマニホールドフランジ、等長φ45mmステンレスワンオフエキゾーストマニホールド、トラスト製TD06 20Gタービン×2/ウエイストゲートバルブタイプC、φ75mm+φ100mmワンオフステンレスマフラー
■冷却系:R33用サイズアルミラジエーター(リザーバータンク付き)、トラスト製電動ファンコントローラー、トラスト製RB26DETT型用インタークーラー、ワンオフアルミ削り出しサーモスタットハウジング、セトラブ製オイルクーラー
■駆動系:HKS製6速シーケンシャルドグミッション、ワンオフミッションマウント、OS技研製トリプルクラッチ、FJ型用ミッションハウジング、プロペラシャフト短縮加工&バランス取り、等速ドライブシャフト、エスコート製強化リアアクスルシャフト、ニスモ製R200(2ウェイLSD)
■サスペンション:エンドレス製ZEALファンクション車高調、ワンオフアルミ削り出しリアメンバー、マナティレーシング製パイプアーム、ARC製レース用フロントスタビライザー、GS31用リアスタビライザー、電動パワーステアリング
■ブレーキ:(F)ブレンボ製F50キャリパー、φ355mmローター(ベルハウジング特注)、キャリパーブラケットジュラルミン削り出し特注、(R)ブレンボ製ポルシェボクスター用キャリパー、φ320mmローター(ベルハウジング特注)、S14シルビア用ABS付きマスターバック、ウィルウッド製ブレーキバランサー
■インテリア:モモ製ステアリング(クイックリリース付き)、オートメーター製モンスタータコメーター、レカロ製スポーツRS-Gシート×2、タカタ製4点式ハーネス、HKS製DBメーターRS(パネル結晶塗装)、ブースト計、モーテック製AFメーター、ワイヤー式アクセルペダル加工、レースオプションワイドルームミラー、アルミバッテリーケース、クスコ製リアタワーバー、エスコート製リアタワーバーブラケット
■タイヤ:ブリヂストンRE55S(F)225/40R17 (R)245/45R17
■ホイール:ワーク・マイスターS1(F)17×9J -25 (R)17×10J -39


【1】【2】【3】【4】から続く


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 日産 フェアレディ Z-T(全5記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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