幻のクロスフローLY型をベースに、ツインターボ仕様を作り上げたプライベーター|1977年式 日産 フェアレディ Z-T Vol.2

純正と同じ形状を持つ社外製リアスポイラーに「LY3.1TURBO」のエンブレムを装着。このZがタダモノではないことを示す、数少ない外観上の手がかりだ。

       
【1977年式 日産 フェアレディ Z-T Vol.2】

【1】から続く

1977年式S31Zを1997年に購入したオーナーは、何ひとつチューニングする気などなかった。その個体はワンオーナーカーで走行距離も少なめ。パワーウインドーやエアコンまで装備される最上級グレードとなれば、ノーマルで乗るのがベストだと思う気持ちが生まれて当然だ。

 しかし、学生時代には自動車部に籍を置き、ラリーやダートラを経験。乗り継いできたS30Zはすべてモディファイされたものばかり。そんな過去を持つオーナーがノーマルのままで満足できるワケもなく、オーナーズクラブのミーティングに参加し、カリカリにイジったマシンたちを見ているうちに、心の底にしまったスイッチがオン! オーナーの我慢は限界を超え、再びモディファイの世界に身を投じる道を選ぶこととなった。

 目指したのは、「S30Z最高のストリートカー」。そこで目を付けたのがS30Zのレーシングカーが搭載していた最終兵器、LY28型エンジンだ。今となってはジャンクの欠片を見つけることさえ困難なお宝だが、なんとか1基調達することに成功。とはいえ、エキマニも付いていなければ、カムチェーンもスプロケットもない。果たしてエンジンが動くかどうかも分からなかったものの、精密機械加工の仕事していたことを最大限に利用し、「ない物は作る」の精神で、LY型エンジンの組み立てという困難に立ち向かった。

 多くのドラマと苦難を乗り越え、TD06 20Gタービンを2基組んだツインターボ仕様として、ひとまずエンジンが組み上がった2005年、S31Zとオーナーに「エスコート代表・塩原浩さんとの出会い」という大きな転機が訪れる。エスコートといえば、現在もドラッグレースで活躍する名門チューナー。その代表にピストンの相談を持ちかけた時、オーナーは悟った。
「塩原さんの知識と経験は本物。自分のようなプライベーターがかなうワケがない。ならば、部分的に改良するのではなく、イチからすべてを任せてこそ、念願である最高のストリートカーが生まれるのではないか?」と。

 こうしてオーナーは、エスコートの手にS31Zを委ねることを決めるが、実は、塩原さんは85年ごろにキャブ仕様のLY型ツインターボを作った経験があり、引き受けることになった。

「当時と比べてパーツの精度がよくなっているし、モーテックでコントロールするとなれば、最高のLY型ツインターボになる」との確信があったという。かくして、LY型ツインターボの物語は、第2章へと突入する。


エンジンルームのセンターポジションに位置するLYのヘッドカバーや、ツインで装着されるTD06 20Gタービンのレイアウトなど【写真45枚】




LY型ヘッドとRB用インマニをつなぐアダプターをエスコートが製作。RB用440ccインジェクターと合わせ、インテーク側の問題は解決。






トラストのインタークーラー、セトラブのオイルクーラー、そしてRB型用のコアを基にしたワンオフラジエーターを装備。





扱い慣れたTD06 20Gタービンがφ45mm等長ステンレスエキマニとともに狭いスペース内に収まるさまに、高度な技術力をみた。



【3】【4】【5】に続く


1977年式 日産 フェアレディ Z-T(C-S31)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:FD3S用レッドオールペン、240ZGノーズ&ヘッドライトカバー、ウエストヨコハマ製フロントスポイラー、130Z用ボンネットダクト、ナポレオンバッカミラー、ワンオフインスペクションリッド、ウエストヨコハマ製3ナンバー用オーバーフェンダー、前期型テール、純正形状社外リアスポイラー、ワンオフリアエンブレム
■エンジン:LY28型専用マグネシウムヘッドカバー(カムラインボーリング、結晶塗装加工)、LY28型ヘッド下面修正フライス加工、トラスト製特注メタルヘッドガスケット、N42後期新品ブロック(レース用メタル特注、クランクキャップボルト穴M12に拡大、クランクラインボーリング、LY型用水穴加工)、ERP製鍛造φ89mmブランクピストン改、ピストンピン穴テーパー加工、カーニングハム製特注鍛造I断面コンロッド(L20型芯間)、クロワー製特注83mmフルカウンタークランク、スペシャルカムシャフト、ワンオフカムスプロケット、クランクスプロケット(キー部分ワイヤーカット放電加工)、ワンオフカムチェーン、ワンオフチェーンガイド、インテークバルブ耐熱鋼ワンオフ製作、エキゾーストバルブインコネルワンオフ製作、バルブガイド打ち替え、シートリング入れ替え、ワンオフロッカーシャフト(リューブライト加工)、ロッカーアームブッシュ打ち替え(リーマー仕上げ)、ワンオフアルミオイルパン(アルマイト仕上げ)、ワンオフオイルストレーナー、オイルストレーナーブラケットワンオフ(クロメートメッキ仕上げ)、ワンオフバキュームタンク、ニスモ製プーリーキット改オルタネーターブラケット、マグナフューエル製フューエルポンプ、RB型用440ccインジェクター、クスコ製タワーバー
■点火系:RB26DETT型用イグニッションコイル、イグナイター、クランク角センサー、モーテックM4シリーズ
■吸排気系:K&N製エアクリーナー、ハイパーチューンアルミサージタンク、φ100mmスロットル(出口角度加工)、LY型→RB型ワンオフ変換インテークマニホールドスペーサー、RB型用インテークマニホールド、三菱エキゾーストマニホールドフランジ、等長φ45mmステンレスワンオフエキゾーストマニホールド、トラスト製TD06 20Gタービン×2/ウエイストゲートバルブタイプC、φ75mm+φ100mmワンオフステンレスマフラー
■冷却系:R33用サイズアルミラジエーター(リザーバータンク付き)、トラスト製電動ファンコントローラー、トラスト製RB26DETT型用インタークーラー、ワンオフアルミ削り出しサーモスタットハウジング、セトラブ製オイルクーラー
■駆動系:HKS製6速シーケンシャルドグミッション、ワンオフミッションマウント、OS技研製トリプルクラッチ、FJ型用ミッションハウジング、プロペラシャフト短縮加工&バランス取り、等速ドライブシャフト、エスコート製強化リアアクスルシャフト、ニスモ製R200(2ウェイLSD)
■サスペンション:エンドレス製ZEALファンクション車高調、ワンオフアルミ削り出しリアメンバー、マナティレーシング製パイプアーム、ARC製レース用フロントスタビライザー、GS31用リアスタビライザー、電動パワーステアリング
■ブレーキ:(F)ブレンボ製F50キャリパー、φ355mmローター(ベルハウジング特注)、キャリパーブラケットジュラルミン削り出し特注、(R)ブレンボ製ポルシェボクスター用キャリパー、φ320mmローター(ベルハウジング特注)、S14シルビア用ABS付きマスターバック、ウィルウッド製ブレーキバランサー
■インテリア:モモ製ステアリング(クイックリリース付き)、オートメーター製モンスタータコメーター、レカロ製スポーツRS-Gシート×2、タカタ製4点式ハーネス、HKS製DBメーターRS(パネル結晶塗装)、ブースト計、モーテック製AFメーター、ワイヤー式アクセルペダル加工、レースオプションワイドルームミラー、アルミバッテリーケース、クスコ製リアタワーバー、エスコート製リアタワーバーブラケット
■タイヤ:ブリヂストンRE55S(F)225/40R17 (R)245/45R17
■ホイール:ワーク・マイスターS1(F)17×9J -25 (R)17×10J -39


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1977年式 日産 フェアレディ Z-T(全5記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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