美しさを最優先するために、手作業で作ることを決断した|読者が選ぶ国産旧車人気ランキング2014 【海外デザイナー車部門 1位】1972年式 いすゞ117クーペ Vol.2

いすゞが手作業で作ることを決断し、生産された初期モデル。

       
【1972年式 いすゞ 117クーペ Vol.2】

読者が選ぶ国産旧車人気ランキング 2014 海外デザイナー車部門 1位

 今回、本誌の海外デザイナー車部門で第1位に輝いた、いすゞ117クーペもギア時代にジウジアーロが手掛けたもの。だが、このクルマにはマエストロの他の作品とは一線を画す美しさがある。117クーペはプロトタイプとしてジウジアーロがデザインしたもので、66年のジュネーブショーでお披露目され、大胆かつ繊細なボディラインのエレガントなスタイルは称賛の的となった。だが、それはあくまでもショーモデルだからこそ成せる技であって、量産モデルでこの曲線美を作り出すことは不可能。量産するためには、生産現場のオートメーション化に合わせて製造できるように、デザインに変更を加える必要がある……通常ならば。

 しかし、いすゞは違った。この美しさを最優先するために、手作業で作ることを決断したのだ。後に本格的に量産されることとなるのだが、初期モデルはまさに手作りで、これが「ハンドメイド」と呼ばれる所以であるとともに、他のジウジアーロ作品と決定的に違うところでもある。ジウジアーロデザインを忠実に再現した唯一無二のモデルが117クーペであり、それ故にたぐいまれな美しさを備えているのだ。

一枚成型のウッドパネルなど【写真6枚】

あの時は買えなかった、念願のハンドメイド



OWNER’ S VOICE/倉持 勝さん

 倉持 勝さんがこのハンドメイドを購入したのは、3年前の2011年1月。だが、じつはもう1台、75年に新車で購入して乗り続けてきた117クーペを所有している。そちらは1.8LSOHCエンジンを搭載する、いわゆる量産モデルだ。「117クーペがデビューした時、あまりのカッコよさにほれてしまってね。でも、ハンドメイドは高くて買えなかった……」と、当時を振り返る倉持さん。

 以来35年以上も乗り続けてきたが、さすがに各部が傷み、レストアを考えた。そのときにネットで発見したのがこの愛車で、奥様を説得して、ついに念願のハンドメイドを手にした。「妻は同じクルマでしょって言うんですけどね」と話す倉持さんは、奥様とイベントに出掛けるのが楽しみだそうだ。



1972年式 いすゞ 117クーペ(PA90)主要諸元
●販売期間 1968年12月~1981年4月

●全長 4280mm
●全幅 1600mm
●全高 1320mm
●ホイールベース 2500mm
●トレッド前/後 1325/1310mm
●最低地上高 180mm
●車両重量 1090kg
●乗車定員 4名
●最高速度 190km/h
●登坂能力tanθ 0.51
●最小回転半径 5.2m
●エンジン型式 G161型
●エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
●総排気量 1584cc
●ボア×ストローク 82.0×75.0mm
●圧縮比 10.3:1
●最高出力 120ps/6400rpm
●最大トルク 14.5kg-m/5000rpm
●変速比 1速3.467/2速1.989/3速1.356/4速1.000/後退3.592
●最終減速比 4.100
●燃料タンク容量 58L
●ステアリング形式 ボールスクリュー式
●サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン/半楕円形スプリング(トルクロッド付き)
●ブレーキ前/後 ディスク/リーディング&トレーリング
●タイヤ前後とも 6.45H-14 4PR
●発売当時価格 172万円

初出:ノスタルジックヒーロー 2014年4月号 Vol.162(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1972年式 いすゞ 117クーペ(全2記事)

2014 読者が選ぶ国産旧車人気ランキング

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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