バブル期のかっ飛びターボ! 軽自動車にとっての大革命前夜生まれ|1989年式 三菱 ミニカ ダンガンZZ Vol.2

非常に綺麗な貴重なダンガン。

       
【1989年式 三菱 ミニカ ダンガンZZ Vol.2】

6代目となるミニカが発売された1989年は軽自動車にとっての大きな変革が起きる前夜だった。言うまでもなくそれは、軽自動車規格の変更。1990年1月1日付で、それまで550ccだった軽自動車の排気量上限が660ccに変更されたのだ。

 1989年に登場したミニカダンガンは、この大きな商機を逃すわけにはいかず、550ccの3G81型から660ccの3G83型へエンジンの変更を余儀なくされる。そのため、たった1年間しか存在しなかったグレードがいくつかある。

 その中の1つが今回の撮影車であるH21Vミニカダンガン。550ccで登場したダンガンは当初貨物、商用車扱い。その後すぐに660ccの乗用車扱いに切り替えられ販売されるのだが、貨物車扱いには、荷室の広さ、補強が入ったボディなど、貨物ならではの特徴が数多くあった。

 もちろんそのパワーユニットは、世界初の5バルブのインタークーラー付きターボ搭載エンジン。まさに弾丸のように飛んで行くような感覚は、強力なエンジンだけではなく、軽自動車規格の軽量ボディならではの効果。走らせる楽しさが、排気量の大きさだけで決まるのではないと、このクルマは教えてくれたのだ。

このクルマのオーナーである井出博美さんは飛んでいくような感覚に魅せられた一人だ。
「ダンガン好きと言っても550ccの貨物、商用車扱いのFF車しか興味ないです」と言い切る程で、自宅の駐車スペースには同型のダンガンが3台並ぶ。それぞれ普段乗り用、部品取り用、保存用となっている。

 ちなみに、旦那さんは、1996年の全日本ラリー2駆部門コドライバーチャンピオン。結婚後は2人でラリーに参加。ラリー出場によって走る喜びを知ると、当時の出力制限いっぱいを発揮するダンガンの面白さが分かってくる。そこからダンガンマニアの生活が始まった。しかもそれは収集する方向へ。

 そんな中、群馬の旧車専門店オートサークルに1台のダンガンが入荷。残念ながら一歩遅く、買いそこねたが、しばらくして、このダンガンはオートサークルに戻ってくる。その連絡を受けた井出さんが、電話口で購入を決めたのが今回の撮影車だ。

 これほど状態の良いダンガンは貴重ということで、群馬三菱自動車販売株式会社が定期整備を行い、保存のためのバックアップを行っているほど。

 井出さんも、このクルマを改造せず、ひたすら点検とメンテナンス。もちろん作業には旦那さんの協力あってのこと。「3台も買ってくれて、日々の整備もしてくれる旦那には、感謝でいっぱい」という井出さん。二人三脚の趣味生活は、これからも充実しそうだ。


1989年は、R32スカイラインやロードスターなど世界中で評価されたスポーツカーが生まれた年である。


ルーフまでリアゲートガラスをまわりこませたラウンディバック。ハイマウントストップランプ付きルーフスポイラーなど特徴あるリアビュー。


この型のみに標準装備のトリプルテールパイプ。実は触媒が存在しない。


世界初の5バルブ・インタークーラー付きターボ搭載の3気筒DOHCエンジン。ラジエーターを左にずらして、ターボユニットの設置場所を確保している。


スピーカー設置位置変更用の板が装着。ウインドーの縦棒は貨物登録車ならではの補強装備。剛性を高め、荷物によるリアサイドウインドーの破損を防ぐ。オーナーのお気に入りポイント。

三菱ミニカ ダンガンZZ(H21V) 主要諸元
全長×全幅×全高(mm) 3195×1395×1465
ホイールベース(mm) 2260
トレッド(mm) 1205(前後とも)
車両重量(kg) 620
エンジン型式 3G81型
エンジン種類 水冷直列3気筒DOHCターボ
総排気量(cc) 548
ボア×ストローク(mm) 62.3×60.0
圧縮比 8.5:1
最高出力(ps/rpm) 64/7500
最大トルク(kg-m/rpm) 7.6/4500
変速比 1速3.538/2速2.052/3速1.392
4速1.000/5速0.810/後退3.500
最終減速比 5.538
ステアリング形式 ラック&ピニオン式
サスペンション 前マクファーソン・ストラット/後3リンク式
ブレーキ 前ディスク/後リーディングトレーリング
タイヤ 165/60R12 70H(前後とも)
発売当時価格 95.9万円

掲載:ハチマルヒーロー vol.17 2012年5月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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text:Nostalgic Hero/編集部 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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