宮田莉朋が参戦22戦目にして初優勝を果たす。|2023年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 Rd.3 SUZUKA CIRCUIT

MOTOR THINGS 2023/06/19

国内最高峰の戦いである全日本スーパーフォーミュラ選手権。第3戦が4月23日の鈴鹿サーキットで行われた。今シーズンから初参戦となるチーム、TGMグランプリの大湯がポールシッターに。それを追いかけるポイントリーダーのTEAM MUGEN野尻。スーパーGTでは同僚の二人による接近戦は思わぬ結末を呼ぶ。


鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラ第3戦。VANTELIN TEAM TOM’Sの宮田莉朋(みやたりとも)が、予選12番手から劇的な初優勝を飾った。

予選では、スーパーフォーミュラ新規参戦となるTGM Grand Prixの大湯都史樹(おおゆとしき)がトップタイムを叩き出し、今季初のポールポジションを獲得。ここまで圧巻の走りを見せてきたTEAM MUGENの野尻智紀(のじりともき)を押さえた。

トップからスタートした大湯は、途中タイヤ温度に苦しむシーンも見受けられたが、コンスタントにタイムを刻み、トップを堅持。フレッシュなタイヤで後半を戦うため、20周目にピットインし、抜群のピットワークでタイヤ交換を済ませ、野尻の前で復帰した。大湯がピットアウトすると、タイヤが冷えた状態でどれだけ野尻を押さえ切れるか注目が集まる。野尻はあっという間に大湯の真後ろに付き、S字に差し掛かったところで、エンジンパワーを一定時間上げるオーバーテイクシステム(OTS)を使用。その瞬間、悲劇が起こった。イン側から抜きにかかろうとした野尻が、大湯に追突。そのままもつれあうようにして、クラッシュパッドに衝突し、2台ともにリタイヤとなった。その後、このクラッシュは、野尻の危険なドライブ行為とみなされ、競技結果に対して30秒加算、ペナルティポイント1点が科された。

この大クラッシュにより、セーフティーカー(SC)が導入された。そして、この恩恵を受けたのは、VANTELIN TEAM TOM’Sの宮田莉朋だ。SCが出るのと同時にピットインし、タイヤ交換を済ませた。予選のトラックリミット違反によって、決勝は12番手からのスタートだったが、これによって3位までジャンプアップ。ここからの怒涛の追い上げを見せる。

宮田は、OTSを使いつつ、2番手を走るリアム・ローソン(TEAM MUGEN)を抜き去ると、あっという間にトップの坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)の背後に付いた。坪井は、OTSを110秒以上残しているのに対し、宮田はたったの19秒。ただ、坪井のタイヤは10周以上使っているが、宮田のタイヤは交換したばかりの新品だ。
軍配が上がったのは、レースも終盤、残り2周に差し掛かった時だった。宮田は、最終コーナーから坪井の真後ろにマシンをぴたりとつけ、最後のOTSを振り絞ってホームストレートで坪井をオーバーテイク。坪井もOTSで応戦したものの、1コーナーを宮田が制したところで、勝負は決まった。その後、宮田は2位以下を大きく引き離し、自身初のスーパーフォーミュラ優勝を勝ち取った。参戦3年目にしてようやく手にした勝利に、宮田自身も感極まった様子。これまで速さは証明されていたドライバーだけに、これからの活躍がさらに期待される。




tgm
MOTOR THINGS ISSUE02(2023年3月31日発売号)の「Off the Grid」(ジャーナリスト伊藤梓さんによるモータースポーツコラム)にて、初参戦に至る経緯をレポートしたTGMグランプリ。TGM GP 53号車、大湯都史樹選手(写真)がポールシッターとなり悲願の初優勝が期待が期待された。決勝では好スタートを決め、その後もトップを守り続けた。しかし、タイヤ交換後のアウトラップで接触するアクシデントに。無念のリタイアとなった。


宮田
宮田
一発の速さには定評があり、常に上位を脅かす存在となっていた宮田莉朋。参戦3年目にして、ついに初優勝を飾った。


野尻
3番手スタートの野尻は、S字コーナーで大湯と接触し、無念のリタイヤとなった。

写真=南 博幸 Minami Hiroyuki 文=伊藤 梓 Azusa Ito