USDMのカルトな情熱を生み出した軽トラ

流行に背を向けた変態路線の集大成としてビルドしたのがT14ミニキャブ改“US版ミツビシ・マイティミッツ”仕様

       
アンチメジャー党をくすぐる個性的なアプローチとして、古い年代のレア車や不人気車種のコンバージョンスタイルがUSDMジャンルのマニアック&カルトな人気を牽引してきたのは周知の通り。が、一部の車種が非公式で輸出されたに過ぎない“軽トラ”のUSDM化に憧れるのは相当奇特なマニアなのはもちろん、US純正パーツの入手の難しさを知ると尻込みするのが実際だ。    

そんな知識自慢の空論ネタに過ぎなかったUSDM軽トラを、素材探しから約3年にわたる水面下プロジェクトのすえ有言実行に移したヤツがいる。それがUSDM界のマッドネス集団「下町エイジアンズ」の通称“カーリー”。メンバーでは天然級のアブノーマル番長をいく彼がハヤリの先駆……ではなく、流行に背を向けた変態路線の集大成としてビルドしたのがT14ミニキャブ改“US版ミツビシ・マイティミッツ”仕様だ。

軽トラベースのUS化はハイゼットの前例が実はあるもの、現地と同じ前期顔のハイルーフ4WD車で忠実再現したミニキャブはいうまでもなく本邦初! 後付けのオバフェンやメーカーロゴ入りのリアゲート、サイドマーカーなどUS特有のディテールを踏襲済み。だが、そのプロセスでの最大の障壁が実は“アメリカに手を尽くしても部品がナイ……”という挫折級のオチだった(爆)。

しか〜し、それでもメゲないのが漢カーリー。集めたマイティミッツの画像を変態USDMの隠れ名工こと神奈川の「エレガントリフレクション」に持ち込み、入手不可なUS純正品のレプリカ複製+ワンオフ板金を敢行したのだ! その結果、仮想USDMを超越したクローン級の完成度をGET。軽トラだろうとヤルからにはトコトン。これぞまさしく愛すべきUSDMバカの鑑デス。


【画像10枚】USDM軽トラの詳細



>>後期型がベースのため、US設定にないプレスラインが入ったボンネットは鈑金にてフラット化してUS面に整形。右ライト上にはネットで拾ったアメリカの現車の画像を元に複製した“OFF-HIGHWAY USE ONLY(高速道路不可)”のコーションステッカーも備わる。



>>足元は“SEDONA”の刻印が入った謎の社外鉄チンホイール12×7JにマキシスのATV用28×8.00タイヤの組み合わせ。ブロックパターンが実にカッコいいが、街乗りでの乗り心地は「……」。




>>フロント:リフトアップスペーサー/リア:ロングシャックルにより、車高はノーマル比1.5インチのリフトアップ。専用パーツが皆無のため、足回りのカスタムも実のところは相当な苦労を介した。



>>ボディから張り出した角フェンダーは、US輸出ミニキャブのみに与えられた意匠。だがUS純正部品がいくら手を尽くしても見つからず、挙げ句「エレガントリフレクション」FRPワンオフによるレプリカ製作を依頼。集めた写真資料を元にデッチ上げられたクオリティは本物を凌ぐ精巧ぶりだ。



>>ボディの左側面のベッド下に備わるバッテリーは、USメーカー「WESTCO」製がこだわり。自動車用バッテリーは個人輸入が法的に不可能なため、実際はバイク用ながらも入手困難な逸品だ。




>>インパネに備わるスピードメーターはマイル表示のUS純正品。アメリカでは構内移動車のため、25マイル(40km/h)までしか刻まれていないあたりが、自虐系のコアねたで笑いを誘う部分。しかし、マニアックだ……。



>>ベースは稀少なハイルーフ版トラックの4WDモデル。アメリカに正規輸出されたのはハイルーフのみのため、現存する大半がロールーフのなか個体の発掘に約3年もの時間を要した。エンジンは550ccの3G81サイクロンエンジンだ。


『カスタムCAR』2013年1月号掲載】

BASE CAR:三菱・ミニキャブトラック 1987年型

ELEGANT REFLECTION 

PHOTO/藤井元輔 TEXT/コンヒデキ

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