アートトラック この絵はオレが描いたものです 虎太郎丸(1984年11月号)

咆哮が聞こえてきそうなほど迫真に満ちた虎のペイント。ドアポケットを虎の穴に見立てているのが本当に見事。


ドアを両開きにした写真は虎太郎丸ならではの決めポーズだ。真正面から見ると、角型のシートキャリアとバンパー、山田電機製のグリルと角目4灯ヘッドライトが絶妙にマッチすることがよくわかる。フロントパネルのレザー生地はジャガー(豹)柄から虎縞柄となった。

アート・トラック・ファンならご存じ虎太郎丸だ。

映画「トラック野郎」シリーズは5作目から登場。また、八代亜紀がこのトラックの上で「雨の慕情」を唄い、全国放映されたこともある。
だが、よくよく見るとその当時と絵が違っている。

「わかりますか? 実は今年の2月に6号線で追突されてね、それでキャビンがグニャッとなって、もう一度描き直したんですよ。以前はジャガーだったんですが、今回はタイガーにしましたから、印象がずいぶん変わっているハズ。もちろん、今回も私がこの絵を描いたんですよ」。

とても素人が描いたとは思えない出来栄え。 それにフロント、平ボディのサイドにシマのレザーが張ってあって、センスの良さを感じさせる。


仕事は茨城井関販売会社専属の農機輸送。虎さんの人柄とまじめな仕事ぶりにより、行く先々で評判を獲得した街道の人気者だ。

「トータルでは300万円ほどかかっていると思うけど、なるべくユニークなものにしたいと思って、みんながしないシートキャリアにしたり、ひと工夫もふた工夫もしてあるんだ」。

日野レンジャーは7年目、36万kmを走破し、愛着のあるトラックだ。


「人生」「流転」「義理」「人情」のアンドンはまさに虎太郎丸を表した言葉だ。

「事故ったとき、新しいトラックに乗り替えようかと思ったけど、修理することにした。あと5年は乗るつもりでいる。いま配線が完全に直ってないから全部ランプは点かないけど……」。

キャビンをのぞくと八代亜紀や菅原文太と一緒に写した写真などがベタベタ貼ってある。大の文太、八代ファン。亜紀ちゃんのキャンペーンにはお声がかかり一緒に回ったこともある。

それに見事なカラオケセットが助手席に。


花満開の雰囲気が広がる内装には菅原文太さん、八代亜紀さんとの写真を飾る。文中のカラオケセットが見えないのが非常に残念だ。

「唄が好きだからいつも流しながら走ってるよ。けっこう長距離が多いから退屈しのぎに、マイクを握り唄いながら走ることもしょっちゅうだネ」。

——実は記事の冒頭部分に大きな間違いというか誤解を及ぼす内容がありまして……。「以前はジャガーだったんですが、今回はタイガーにしましたから、印象がずいぶん変わっているハズ」という虎太郎丸こと虎さんの言葉が指すのは、ペイントではなくボディに張られた生地のこと。なお、事故をキッカケに運転席側のペイントを描き直したことは事実だ。

約40年のときを経て、2023年3月号の巻頭特集は虎太郎丸を大々的にフォーカス。生地変更のいきさつもバッチリ紹介しているので、まだ読まれていない人はぜひ手に取ってほしい。


2023年3月号特別付録のポストカードも虎太郎丸!

文:編集部 カミオン1984年11月号をもとに再構成

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