アートトラック 昔の名前(モエロ・ナツコ)で走ってます 日野ZM(1984年10月号)

ニックの駒定号は愛犬の名前。


一見シックな装いながらシートキャリアとバイザーはウロコステンレス、バンパーとフェンダーはメッキと素材を使い分け、見た目にアクセントを設けている。

「このクルマを買ったのが5年前。ナツコという名に想い出があるわけじゃないが……、そのとき付けたアンドンなんだ」と言うのは、「モエロ」と「ナツコ」の胸アンドンのこと。

モチーフは資生堂ナツコビューティーパクトのCM「’79サマーキャンペーン・ナツコの夏」で、キャンペーンソングはツイストの「燃えろいい女」。モデルの小野みゆきは同時期に上映された映画『トラック野郎 熱風5000キロ』のマドンナ役なので、トラッカーにとって馴染み深い文句だ。

ただそれだけに装着から5年が経つと消費期限が気になるのか「そろそろ替えたいと思っている。ちょっと古くなったから」とコメント。当時における流行の移り変わりの速さを物語る一方、見出しにも「昔の名前(モエロ・ナツコ)で走ってます」で、編集部が少々いじっているところに時代性を感じる。

「ここ数年はあまり新しいものは付けていない。やるとしたらシートキャリアだけど、ここ石巻では最近あまり派手なものはやらないみたいなんだ。それに大きいのだと重くなるから。バンバーでさえ30kg以上あるから、これ以上重量を重くしたくないということもあってネ」。


記述がないため憶測になるが、土地柄アンドンは白銀社の作品だと推察。

この日野ZMには、これまで250万円ほどお金をかけて飾られており、バンバーはメッキで費用は35万円。シンブルだがさすがメッキならではの風格。現在見れば、とてもシブく硬派な仕様だが「ボディカラーはダークブルーで地味。どこまでもおとなしく目立たずといったダンプだ」という当時の誌面における記述は、いかにも第二次デコトラブーム真っ只中の感想だろうか。

「内装はモケットを張り、パーソナル無線を天井に取り付けてあるけど、これといった凝ったものでなく、ごく普通のもの。5年目になり、そろそろ大幅にデザインを変更しようかと思っている」。


当時の誌面は費用の記述は多い一方、パーツそれぞれの具体的な情報が乏しく、なおかつ写真点数が少ないのが今となっては残念だ。この写真にしても記述は「ハート型のハシゴ」のみ。寝台パネルが非常に気になる。

そして「東北の飾りは実用度を加味してあるだけに派手さはない。が、なにか風格を感じさせるものが多い」と文章を締めているが、キャブとボディに装着されたキャッチーなハート型ハシゴにもみちのく風情が確かに息づいている。

文:編集部 カミオン1984年10月号をもとに再構成

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